〈第五章〉 Side:智雪麗 an Immigrant ④

わたしの目の前で腕を押さえた倒れた行政書士を見て、事務所から出ました。


正直言って、怖かった… … 。


あの先生も、もうすぐ白い結晶になるでしょう。


そのリアリティを直視することができませんでした。


香城がわたしに永住権の有無について問いかけてから、半ば強迫観念のように永住権の取得を考えるようになっていきました。


もはや、それは渇望といえるほどに激しいものとなっていきました。


頭では、永住権取得は、無意味であることや、もう入管が永住許可申請を受付れる状態ではないことは理解していました。


それでも、わたしは、無性に永住権が欲しくなりました。


いずれ遠からず、わたしも[白]くなる。


それは、今日かもしれないし、明日かもしれない。


確実に、わたしは、[白]くなるそれは、理解しています。


でも… …


確実に… …


わたしは、[白]に抗いたい。


例え、それが、香城が知識創造する世界の実現だったとしても… … 。


わたしは、この「白い世界」に抗いたい続けたい。


それが、香城が言う「耐え難き偽善性」であったとしても。


ああ… … 世界は、白く白く染まっていく… …。

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