〈第五章〉 Side:智雪麗 an Immigrant ③

わたしの周囲も[白]で覆われ始めたとき、一度だけ昔使っていた池袋北口の喫茶店で会うことができました。


店内は、比較的整っていましたが、当たり前のことですが、誰も注文を取りに来てくれませんでした。


香城は、わたしの前に座り、そして、わたしの目をじっと見つめ「偽善に耐えることはできなかった」と言いました。


わたしは、その後に続く香城の言葉を待ちました。

ずっと待ち続けました。


でも、それっきり香城の口が開くことはありませんでした。


香城は、わたしと別れる際、「永住権は、取ったのか?」と聞いてきました。



「取ってないけど… …」



わたしは、なぜ、香城がそんな意味がないことを聞いてくるのか理解できませんでした。


もう、この白い世界で永住権を取っても無意味であることは明らかです。


それなのに… … どうして?


この無意味な会話が、わたしと香城との最後のものとなりました。

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