およそ叶うはずのない逃避行
- ★★★ Excellent!!!
生贄に捧げられることが決まった少女とその兄の物語。
ファンタジーです。タグによれば「メソアメリカ風」と、なかなか珍しい舞台設定のお話。
分量にして約3,000文字とコンパクトなこともあり、この先はネタバレを含みますのでご注意ください。
〈 以下ネタバレ注意! 〉
悲劇も悲劇、胸にぶっ刺さるようなお話でした。
まず逃げられるはずのない、でもとてもそうせずにはおれなかった、衝動的ながらも必然の逃避行。それがおおよそ思った通りの結末を迎えて、つまりはある程度は〝わかっていた〟つもりが、でもこんなにも胸にグサグサくるのはどうして?
なんというか、まんまと手のひらで転がされた感じです。情動を作者の意図通りに揺さぶられるような、この読書感覚の心地よさ。
結びが好きです。あの重苦しさ。文章越しに伝わってくる、まるで押しつぶされるかのような苦しみとその先の絶望。
非常にシンプルなお話のようでいて、でもきっちりツボを押さえてくれるお話でした。単純に読みやすいところも好き!