貧乏神に憑かれてしまった者の悲哀

 貧乏神を見ることのできる男が、貧乏神に取り憑かれた家出少年を保護する物語。

 真面目で堅実な人間ドラマが主軸の、すこし不思議な現代ファンタジーです。
 悲惨な境遇にある少年に、手を差し伸べる大人の物語。創作らしい不思議要素として「貧乏神」と「金持ち神」というものが登場し、そして彼らはそれを目に見ることのできる能力を持っている、というお話です。

 シンプルでわかりやすくまとめられたお話で、読んでいて詰まったり迷ったりすることがなく、すいすい想像できるところが魅力的。特に「貧乏神」というものの特性が好きです。
 単に人を金銭的に困窮させるのみではなく、それが直接的に人の言動や精神状態に影響を及ぼす存在。「人をよくない方向へと向かわせる何か」という感じで、本来はきっと曖昧な存在であろうはずのそれが、でも感覚的に「わかる」ことの心地よさ。

 展開そのものも非常にシンプル……と思いきやこれがなかなかどうして、思いもしないところに強烈なワンパンチが。
 衝撃の展開にまんまとやられたお話でした。