したたかに生きる小さな退魔士の戦い

 退魔士の家に生まれた少女の、普通ではないながらも満ち足りた日々と、そこに現れた強敵との戦いのお話。

 ちっこい退魔少女とでっかい日本刀が印象的な現代ファンタジーです。
 とにかく全編にわたってケレン味たっぷり、強めにエッジの効いた各種設定が魅力的。分量の大半がガチガチのバトルに費やされていることも含め、まさにどエンタメといった趣の短編です。

 最大の魅力はやはり戦闘シーンのガチっぷり、一進一退の攻防が繰り広げられるところ。能力の派手さや勢いで押し切るのではなく、しっかりと策を練って戦うのが本当に良い。三下かと思いきや意外と強かった敵キャラも含めて、手に汗握る展開にワクワクしました。

 もう一点、個人的な好みという意味では実はこちらの方が好きなのですけれど、第一話『真夜中』で描かれている主人公の日常が好きです。
 単純に退魔士というものの説明でもあるのですけれど、でもそれを彼女がどう捉え、そしてどのように生きているのかが伝わるのが楽しい。例えば人と違う退魔士の人生の、どういうところをメリットとして認識するのか、その着眼点をもって性格が著されていることの心地よさ!

 それらの設定(あるいはその描かれ方)がしかし最後の最後、まさかあんな形で効いてくるなんて……最後の大オチも含めて、思わぬところから「あー!」と唸らされる作品でした。