自主企画や質問参加用のハコ

あとみく

その物語を一文で表すとどうなる?みなさん作品の「プレミス」を募集!!(BL「黒犬と山猫!」で挑戦)

■プレミスとは?

→ストーリーを一文(か二文)で表現したもの

フィルムアート社は、これまで数多くの小説執筆に関する本を出版していますが、それらの多くの本が「結局それってどんな物語なの?」を一文で表現することの重要性を説いています。

プレミスは、

①他人(読者)に自分の作品を知ってもらう(アピールする)

②執筆のスタート地点であり、執筆中に下すあらゆる決断のベースとなる

という意味で非常に重要です。

(以上、自主企画の「企画内容」より抜粋)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

…だそうです!!

自主企画

「その物語を一文で表すとどうなる? みなさん作品の「プレミス」を募集!!(主催者:フィルムアート社)」

https://kakuyomu.jp/user_events/16816452221275825039

に参加してみます。

というわけで、あとみくのメイン長編小説「黒犬と山猫!」について、プレミスをやってみまーす!!!(それほどのネタバレはありません)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【エクササイズ】


■ 主人公は誰?

山根弘史(=山猫)


■ 主人公は平凡か、非凡か?

社会的にはごく平凡なサラリーマン。特に目立つところはない。

ただ、たまに幻覚や幻聴があったり、精神的に思い詰めるとそれが体にも影響したりといった部分は、やや非凡かと思う。


■ 冒頭で主人公はどんなシチュエーションにいるか?

冒頭は、いつものように会社で残業しているシーン。ふいに同期の黒井が話しかけてきたので、他愛ない会話をするというシチュエーション。


■ 冒頭での主人公の状態は?

主人公は営業成績もイマイチな非リア充で、とりあえず会社の仕事を何とかこなしつつ、パッとしない日常を送っている。

本当はリア充に憧れている面もあるが、頑張ってみても思うようにならないし、理想の人間関係を築けないので、やや上から目線で拗ねている。

それで、いかにもリア充っぽい同期が話しかけてきたので、「な、何で僕に?」とドキドキしつつも、期待するもんか…という感じで、<日常>を崩さないよう、強がっている。


■ 主人公または敵対勢力によって、それはどう変わっていくか?

リア充への憧れをこじらせた<拗ね>はかなり強いが、そういう、諦めとか、自分には無理だとか、そんなことしたって意味ないとか、そんな感情が、「敵対勢力」によってどんどん崩され、あるいは崩さざるを得ない状況になっていく。そして主人公は、端的に言えばまあ人間的に丸くなっていく(変化)。


■ 主人公が置かれたシチュエーションは平凡か、奇抜か?

平凡。


■ 主人公の目的は?

物語開始時点での主人公の根底にある目的…というか理念、ポリシーは、自分だけで完結したプライベートな世界を死守して、誰にも邪魔されずに平穏に過ごすこと。波風を立てず、ルールを守って、目立たずに生きること。


■ メインの敵対者は誰? 人物でなければ何と敵対する?

メインの敵対者は黒井彰彦(=黒犬)。

人物でなければ、「リア充」、そして「世間」とか「会社での常識」とか、「みんなから変に思われるんじゃ…」という不安とか、そういう漠然としたものと敵対する。


※ここでの「敵対者」および「敵対勢力」という概念は、悪者とか魔王とかそういう意味ではなく、「主人公に最も試練を与えてくる人物(や物事)」という意味で使っています。後述するプロットの本でそのような使い方をしており、私はこれに慣れていたため違和感なく使ってました…このエクササイズ的にはどうなんだろ??(;^ω^)

【敵対者】・・・恋愛もののほとんどは恋の相手がそれにあたる。主人公の心のドアを最も多くノックし、戸惑わせ、葛藤を引き起こす人物が「敵対者」。主人公の今までの考え方を変えさせ、生まれ変わらせる。物語中、この「ノック」は大事なところで何度も行われる。


■ 「普通の世界」にいる主人公が葛藤や対立を体験し始めるのは、どんな災難が起きるからか?

「酔っぱらった同僚(黒井)をタクシーで送る」という、主人公にとっての非日常体験(=リア充という敵対勢力側の行為)に直面するが、そこで突然、感情より先に身体がひゅっと何かを感じて、後から「自分はこの同性の同僚が好き?」ということに思い至る…という災難が起きるから。


※ここでの「災難」という単語も「敵対者」と同様、悪い出来事だけでなく、恋に落ちる、栄転するなどの良い出来事も含むと解釈しています。

「主人公の葛藤」というのを全ての軸として…

・葛藤を引き起こす人物が「敵対者」

・葛藤の下地となる世界観や概念、物事、その立場の人々等が「敵対勢力」

(例えば映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では「タイムパラドックス」という事象自体が主人公の目的(無事に未来へ帰還する)をおびやかす敵対勢力の一つとなる)

・葛藤を引き起こすピンポイントの出来事が「災難」

…という具合。


■ その災難に対する主人公のリアクションは、どんな葛藤と対立を生むか?

主人公は「自分は同性が好き!?」という気づき(=災難)に対し、はじめは否定したが、いったんその事実を受け入れる(リアクション)。

しかしそれは、特にゲイだということもない主人公が初めて抱いた感情であり、また突然すぎて意味も分からず、自分のことを完璧に管理している自負があるのに「自分のことが分からない!」という葛藤を生む。

また、同性への片想いは、もちろん社会的な葛藤と対立を生む。


■ その葛藤と対立はすんなり解決せず、ストーリー全体を通して続く。その理由は?

主人公は

・相手が「同性愛者と思われることを嫌がっている」と思って自分の想いを必死に隠したり…

・友人として好かれていても、恋愛の好きではないだろうと推測して落ち込んだり…

・仮に両想いになったって男同士で結婚できるわけではないし…

・仮に同性同士という問題は横に置いても、告白して付き合って結ばれてラブラブ…というのは「リア充的行為」であり、自分がリア充になれるのか!?なりたいのか!?と思ったり…

・あるいは、悩みすぎて精神がぐるぐるし、自分からおかしなことをしてしまったり…


とにかく、「突然感じた、ひゅっとした何か」という言葉にならない内面現象と、「世間的に見れば同性愛」という外部的状況をすり合わせようとして、次から次へといろんなズレが出てきて、それはストーリー全体を通して続く。そしてその理由の多くは、「主人公の頑なすぎる性格」によるものである。


■ このアイデアに説得力はあるか?

説得力!?

ん~、っていうか「アイデア」っていうほどのものでもないしなあ。説得力は、まあ、普通で。


■ このアイデアに独自性はあるか?

アイデア自体に独自性はあまりないと思う。リーマンBLや恋愛ものであれば、まあ通る道ばかりだし。


■ 他の類似したストーリーとの違いは?

1、主人公が精神世界でぐるぐるし、現実との区別が曖昧になり、そこで、単に「恋愛で、誰々が好きっ!」というのとは少し違う次元で、自分と相手の存在というものを見つめる視点が語られる

2、上記1により、一般的な感情移入よりも深い没入感、酩酊感みたいなものが得られる(…といいな、という希望)

3、客観的な視点で編集されたエンターテイメント作品ではなく、完全に作者の主観のみで展開するので、「何でリーマンBLで素粒子論!?」みたいなことになったりして、王道パターンにはまらず、予想を裏切る展開になる


■ どうすれば独自性を高められるか?

うーん、特に独自性を高める必要性は感じていない。っていうか私の場合、独自すぎるイコール言語化不可能という認識(笑)

むしろ、共感してもらう、気軽に読める、「あー、こういうの落ち着くよねー、普通でいいんだよねー」っていう方を意識している感じ。


■ ストーリーの焦点は?

「主人公と相手が結ばれるのか!?」が焦点なのは当然として…。

主人公が相手との関係を深めていく中で、自分と向き合っていく過程が、一つの焦点かな。

主人公が自分自身をセルフカウンセリング的に分析しつつ、分析できない非言語領域にも果敢に挑んでいく「実践シミュレーション」なのが見どころ。

頑なで排他的な主人公が、自分ではない他人を愛することで自分を癒していくというのが大きなテーマ。


■ ジャンルは?

リーマンBL


■ 読者層は?

BL好きの社会人(いわゆる腐女子)。

いや、もちろん学生さんも大歓迎だけど、やっぱり「会社あるある」とか、20代後半・30代になってからの「この生き方、なんとかならんかなあ」みたいな悲哀?が共感できるかと思うので。


■ 質問への答えを見ながら、プレミスとしてひとつの文にまとめて下さい。

【プレミスの例】

孤児ヒースクリフ(主人公)は養子となり(シチュエーション)、やがて義理の妹キャシーの愛を求める(目的)が、キャシー(敵対者)が近くに住む裕福な男を夫に選んだこと(災難)により、復讐のために冷酷な仕打ちに乗り出して周囲の人々に対抗する(葛藤と対立)。

(エミリー・ブロンテ作『嵐が丘』)


あなたのストーリーのプレミス(ひとつかふたつの文で表して下さい)。


ごく平凡なサラリーマンの山根(主人公)は、目立たずパッとしない毎日を送っていたが(冒頭での主人公の状態)、リア充っぽい同期の黒井(敵対者)を突然好きになってしまう(災難)。その想いを隠しながら友人として付き合うも(葛藤)、黒井の奔放かつ奇抜な振る舞いにより、「好き」という感情をこじらせた山根の非日常的日常が繰り広げられる(ストーリー全体を通して続く葛藤)。

(あとみく作『黒犬と山猫!』)




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



いやーーーー、このプレミスで作品の魅力が伝えられているかと言われると、うーん、単語のチョイスがまだまだだし、アピールポイントが絞れていない!(;^ω^)


しかしまあ、頑張りました!!


そして実は私、「プレミス」という言葉は今回初めて知りました。

でも、内容としては以前プロットの勉強をしていた時に親しんだものであり、入りやすかったです。そして、私のプロットの教科書はこれ。


「映画ライターズ・ロードマップ〈プロット構築〉最前線の歩き方」

ウェンデル・ウェルマン著、吉田 俊太郎 訳/フィルムアート社


ちなみに、「黒犬と山猫!」本編の中でも、山根がこの本を使ってプロットの勉強をする場面があります。そして「旅に出た主人公が試練に打ち勝って本当の自分を見つけ、英雄になる」というプロットの基本的筋書きを黒井に教え、その創作欲求を満たそうとします。

「黒犬と山猫!」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054899173206(表紙)


第169話「それはただのプロット表」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054899173206/episodes/1177354054913477848

第222話「第一回プロット会議」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054899173206/episodes/1177354054917270319

第227話「第二回プロット会議」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054899173206/episodes/1177354054917272552


また、創作行為だけでなく、人生自体にもそれを当てはめて、自分がプロット上のどこを進んでいるのか確認することも。まさに「人生のロードマップ」として活用しております。

第271話「機上、数ミリの愛撫」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054899173206/episodes/1177354054919355978

(物語の主人公が自分で自分のプロットを考察してりゃー世話ない・笑)


…ん?

っていうか、フィルムアート社!!!(この自主企画の主催者様!!)


あ、なんだ、元々フィルムアート社で勉強してたのか、私(笑)


というわけで、フィルムアート社様、このような興味深く実践的な自主企画を立ち上げて下さりありがとうございます!私がこの本で学んでいたのはもう10年以上前ですが、自分がこんな風に参加できる機会が訪れるとは、当時は夢にも思いませんでした…!!


わー、楽しかったです。

でもこのプレミス、自分で思う認識と、読者様の感覚はまた違うと思うので、本当に書籍化とか目指して活用したいなら、読んだ人に書いてもらって見比べて、何度もブラッシュアップしていくのがいいでしょうね。

ではでは、お粗末様でしたー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る