睦. 視線

「これは私のおばさんが体験した話よ。」


「おばさんは大学進学と共に京都に引っ越しをしたの。その時のおばさんは念願の一人暮らし、さらに希望大学に受かったのあってそれはもう喜んでいたそうよ。おばさんは大学から少し遠い古い木造のアパートに住んだのよ。ベットとか机とかを置いくともう部屋がいっぱいになるくらいの小さな部屋に住んでいたの。その部屋に住んでしばらくは、大学の友達とかを呼んで毎日楽しく暮らしていたの、ただの一点を除いて。」


「おばさんはどこかから視線を感じたらしいの。視線って言っても何か恨みとか、殺気とかはなくて、ただこちらを見ている視線なの。何の感情もないまっさらな視線が一度に何十も重なっているようなに感じるらしいの。それもある場所にいるときだけこちらを見つめる視線を感じたらしいの。その場所がベットなの。その当時、ベットは玄関の向かいに、壁に挟まれる感じで置いていたの。そのベットに腰掛けたり、寝転んだりしたときにだけ、視線を感じるの。その視線は窓でもドアののぞき穴から感じるんじゃなくて、玄関側の壁から感じるの。壁から視線を感じるってとてもおかしいけど、おばさんは確かに壁から視線を感じたって言ってたわ。勿論、視線を感じている時はおばさん以外に人はいないし、壁に穴があるわけじゃない。だから、他人の視線って訳ではないの。それに、ただ視線を感じるだけで、その後に。肩が重くなったとか、交通事故が起こったとか、そうゆう霊障とか、害を及ぼしたりする様なことは起きなかったの。だから、おばさんはタダの気のせいと思って大学生活を過ごしていたの。」


「なんか、拍子抜けするような話ですね」

(と、石川が茶々を入れる。)


「石川くん。人の話は最後まで聞くのよ。で、話の続きだけど。そんな視線を感じ始めたのが、引っ越して大体半年くらいの10月くらいから。夏休み中に帰省から帰ってしばらくしてだからはっきり覚えてるっておばさんは言ってたわ。今までは"ベット"で視線を感じていたのだけど、大学2年生の後期の中頃から、部屋にいるだけで視線を感じ始めたの。最初は、シャワーを浴びている時とか、テレビが終わった瞬間とかのふとした瞬間に視線を感じるたの。その"何もない"視線は次第に頻度も感じる時間も長くなったの。最初の頃は壁のほうを見れば大体は感じなくったんだけど、次第に、感じなくなるまでの時間も長くなったの。これにはおばさんも、『これは只事じゃない』って思ったの、脈々と事態は悪化してるって。そうやって、頻度が増えていくから、気味が悪くなっていたの。こんな状況でも、何も害がないこともあって、視線の主が何をしたいのかも分からない不気味さを感じたの。そんなこともあって、おばさんは、地元の有力な霊能力者に自分の家を見てもらうことにしたの。」


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「霊視をしてもらう当日。霊能力者の先生は家に入った瞬間に首をかじげたらしいわ。おばさんが何故かって聞くと。

『おばさんの聞いた話を聞いた限りでは、複数の霊が、地縛霊のような霊が家にいると考えていたけど、実際に視てみると何も感じないの。霊は勿論もこと、霊の痕跡とか何も感じないし、見えないの。例えるなら、力のある霊能力者による除霊をした直後みたいに、綺麗に何も感じないの。』

って、これを聞いたおばさんは心が少し軽なった気がしたの。あれはただの気のせいだったんだと、これで元の生活に戻れると自分に言い聞かせたの。霊能力者の先生が帰った後、おばさんは心晴れ晴れの気持ちで夕食の準備を始めたの。あの視線は気のせいだったんだと。その日は、少し奮発して豪華な食事を作ったらしいの。そして、日常に戻れたことに安心したらしいわ。その夜、おばさんが寝ている時、寝苦しくて真夜中に起きたの。水を飲もうと洗面台の電気をつけて蛇口から水を出して、水を飲んでいたの。水を飲みながら部屋に飾ってあった時計をみると深夜2時を過ぎていたの。コップに残った水をシンクに捨てようと、部屋に背を向ける瞬間。あれを感じたの。何もないあれを。おばさんは、自分の心臓の鼓動が跳ね上がったのを体で感じたわ。勇気を振り絞って振り返ってみると、視線は消えていたわ。おばさんは電気を消してベットに戻ったわ。」


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「それから、おばさんは大学を卒業するまで、そのアパートに住んだそうよ。不思議なことに、あれから視線は感じなくなったらしいの。大学を卒業する直前にアパートの取り壊しが決まったらしいの。そしたら、おばさんの借りていた玄関側の壁にとんでもないものが埋まっていたらしいの。」

(一同の唾を飲み込む音が聞こえる)


「それは、人間の目だったの。数十人分の人間の目玉が詰まったホルマリン漬けの瓶がいくつも発見されたの。」


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「それを知ったおばさんは、なぜ二年前の霊能力者の先生が何も見えなかったのか、なぜ視線しか感じずにこちらに物理的な被害が及ぼされなかったのか、なぜ視線は

何の感情がないのか、その理由がわかったらしいわ。」


語り部: 浅見 遥香

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幻説現世百物語 〜沙羅農業高校オカルト研究部 空想奇譚集〜 空奈伊 灯徒 @kalanai_hitoh_0

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