第4話 また明日から
身支度を整えて家を出ると、
ビルとビルの間の路地に入り、いくつかの角を曲がると小さな朱色の鳥居が見えて来る。揃って一礼して鳥居をくぐった。
しばしその場に
謙太と知朗は
小さな神社なので、振り返り数歩歩いたらもうお社だ。
「ツルさん、ここに戻って来てはるかなぁ」
「多分な」
格子状の木製の扉から見える向こうに
それにツルさんを重ねてみると、合致する気がするから不思議だ。ああ、あれはツルさんなのだなと自然と受け入れることができる。
謙太と知朗は丁寧に
ツルさん、ありがとうございました。ええ経験ができた気がします。これからも励みますんでどうか見守っていてください。そしてアリスちゃんと太郎くんと夏子ちゃんと、あの空間にいた人たちが、健康で幸せに生まれ変われますように。
目を開いて顔を上げると、隣で知朗はまだ手を合わせていた。だがそう差も無く顔を上げるとにやりと口角を上げた。
「ツルさん死神さん、夫婦喧嘩もほどほどにな」
知朗の言葉に謙太は「あはは」と笑みをこぼす。
「死神さまも一緒におるんかなぁ。それとも魂を抜くお仕事中やろか」
「どうだろうな。俺はツルさんがちゃんと仕事しててくれたらそれで良いさ」
「神さまに向かって偉そうやなぁ」
「だってツルさんだろ」
「あはは」
そんな軽口を叩きながら、謙太は無作法だと思いながらもぱんぱんと2回手を叩いた。
「明日からまたよろしくお願いしますねぇ、ツルさん」
知朗もまたそっと手を合わせる。
「よろしくな。商売繁盛だぜ、ツルさん」
そして手を下ろし、ふぅと達成感を感じる息を吐いた。
「さぁて、今日はどうしようかぁ」
「そうだな、正直昨日は寝た気がしなかったからな、明日に備えて旨いもんでも食ってゆっくりするか」
「そうやね〜。幸せになれる美味しいもの食べに行こう! 何がええかな〜」
そしてふたりは鶴杜神社を後にし、足取りも軽やかに帰途に着いた。
おいしい心残り〜癒し、幸せ、ときどき涙〜 山いい奈 @e---na
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