第3話平穏の陰①
諭吉一枚払ってユウコとの時間が終わった。
高いと見るか安いと思うのか、人それぞれであろう。女子大生というユウコ。少しキツめな性格だが司は嫌いではない。
それに連絡先も教えて貰った。定期的に会えそうだし、諭吉一枚の価値はあると司は思った。
♢
翌日は休みだ、久しぶりに惰眠を貪っていた司は階下からの声に目を覚ました。
妻の瑠衣の声だ。司はぼんやりとした頭でベッドサイドの時計を見る。お日様が一番高い時間だった。
欠伸を噛み殺しながら階段を降りてきた司を見留めた瑠衣は呆れたように言った。
「いつまで寝てるのかしら?」
疲れてるのは分かるけどね、と眉尻を下げて瑠衣が微苦笑する。その間も手はエコバッグから買ってきた物を仕分けるのに休みなく動いている。
「買い物行ってたのか?」
「今日はパートが昼過ぎからだから、その前にと思って」
起こしてくれたらと司は思ったが、瑠衣の気遣いに「お疲れさん」と言うに留めた。
それから昨夜の残りのクリームシチューを昼ごはんにして二人、食べ終える。
「ごめん、洗い物任せていい?」
瑠衣が申し訳なさそうに胸の前で手を合わせた。時計を見ると一時を少し回ろうとしていた。パートの時間に遅れそうなのだろう、司は問題ないと首肯した。
瑠衣は家から歩くと二十分程かかるコンビニエンスストアに半年前からパートで行っている。
付き合って二年、結婚してから三年、併せて五年に渡る二人の時間は上手く行っていた。
ただ、それなりの時間が経ち、子宝に恵まれていないのもあって平穏は惰性なものに変わりつつあった。
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