第1話 ユウコ①
二十二時二十一分。
自虐行為に過ぎない何ら手当ても出ないというボランティア残業を終え、ようやく司は会社を出る。
抱えている仕事に蹴りがついたら、まとまった休みを取ろう。
ポマードでテカった油虫がどんな顔をするのか見物だ、と司はほくそ笑んだ。
昏いグレーに塗り潰された空に不規則な光が瞬いた。
夕方に強い雨が降ってからは止んでいたのだが、また降り出すのかもしれない。
そんな事を思いながら、がらんとした会社の駐車場に着いた。ぽつんと残された白いワゴンタイプの車が今日はやけに寂しく見えた。
車に乗り込みイグニッションを回し、煙草に火を点ける。シートに深く身体を沈め、紫煙が車内を揺蕩うのを横目にしながら司は思った。
(なんだかムラムラするな)
独身の後輩が遊んでいると教えてくれたアプリを立ち上げる。すでに必要な情報は入力済みであり、検索機能を使って掲示板へと飛ぶ。ヒットしたのは四件。
何となくの気分で一番上にあったIDにメッセージを送った。
街を分断する中央通りは立錐の余地もない程に黒と黄色で織り成すタクシーの葬列。
客待ちの彼らの顔は皆 一様に魂の抜けた顔をしていた。
ショーウィンドウに映った自分を見るようで腹ただしい。
遠くで雷鳴がした。
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淡々と進行しますよ。
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