アぇ

疑惑

 私の名前は、山上大和(やまかみ やまと)。小さい頃に病気で母を亡くした。その後、父の山上大輔(やまかみ だいすけ)が育ててくれた。

 父の職業は銀行員だった。父は母を亡くしたことを境に今まで以上に働くようになった。朝早くから仕事へ行き、夜は遅くに帰ってくる、そんな生活をしているのに、私の事も相手にしてくれた。厳しけど優しくてメリハリのある性格の持ち主だった。

 しかし、そんな父の運命を狂わせる男が現れた。

その男は安道吉(あんどう きち)と名乗った。



 ある日突然、安道は銀行員の父に多額の融資を頼んできた。店を出すと言う理由だった。

「信用もない一般人に多額の融資なんてできない。」父はそう言って融資する事を断った。しかし安道は懲りずに融資を頼んできた。安道はそんな事をもう、一年ほどしていた。

 安道はある日、とても落ち込んだ顔で融資を頼んできた。流石に父も話しを聞く事にした。すると、「闘病中だった妻が…死んじまった…。」と安道は言った。安道は妻と店を経営する事が夢だった。そんな安道の悲しむ姿を見た父は安道に億単位の融資を決定した。

 しかし、安道はプライベートでも父と関わり出すようになった。そしてプライベートの場でも金が足りないと借りようとしてきた。プライベートでは無理だと父はしっかり断った。数ヶ月すると次は銀行で安道は父に2店舗目を出店したいと言ってきた。そうつまり、また融資の頼みだった。安道は、融資を決定したところで返済できるかは確かではなかったので父は断った、しかし安道は担保として安道自身が亡くなれば1億円が返済されるようにしたため父は融資を決定した。

 

 

 しかしある日、株が暴落した。それによって多くの店が閉店に追い込まれた。安道の店もその一つだった。そして安道には借金だけが残った。

 株が暴落した影響で銀行にも貸す金が無くなった。なので今までの融資を回収するよう銀行員たちは言われた。そして融資の返済をしきれず多額の借金を背負ったもの達は自殺するようになった。父は安道もその自殺者のうちの1人にならないようにするため、借金返済のために何か手伝える事はないかと父は安道の元へ伺うようになった。



 そしてある日、父はいつも通り「安道さんの所へ行ってくる。」と言い帰って来なくなった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アぇ @A_alle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る