答え(ネタバレ)
一応質問は受け続けるので自力で解きたい人は注意
正解者:おくとりょうさん。あるとぷさん
自分の死期が近いと悟った権太光成は、三人の息子の仲の悪さを危惧していた。
常に互いをライバル視し、自分が一番になろうとする姿勢は、時に危うい思考だと度々語るも、皆聞く耳を持つことはなかった。
このまま自分が死ねば、権太家は割れる。そんな時の相談相手は決まっていた。
「私に一つ考えがあります」
十年以上影で光成を支えてきた秘書の安出誠一郎は、光成に最後の助言をした。
一ヶ月後、光成の自室に呼び出された長男の一真、次男の雄二、三男の三和は部屋の真ん中に見慣れない箱がある事に気づいた。
箱には6桁の数字錠が掛かっていて、その隣には安出が立っていた。ベッドに横たわったまま、光成は言った。
「この箱の中には私の財産の全ての権利書が入っている。最初に箱を開けた物にそれを譲る。錠を開ける為の鍵となるヒントはこれだ」
光成はヒントの書かれた紙3枚を安出に渡した。
「言っておくが、錠を無理矢理開けたり、他の二人のヒントを盗み見たらその場で継承権は無効になる。謎解きの開始は私の葬式を終えてから3日後の12時とする」
その日の夜、光成は亡くなった。そして宣言通りヒントを受け取った三人は早速謎解きを開始した。
一真(問題は……数字当てか、これなら一番得意な俺で決まりだな)
1時間もしない内に解いた一真だったが、
一真(なんだこれ、数字が左の2つしかでないぞ?)
てっきり全ての数字が出ると思っていたのに、何度解いても同じ結果になる。一真は箱のある部屋へ行き、安出に詰め寄った。
一真「おい!これはどういう事だ?」
安出「何か問題でも?」
一真「問題しか無い!いくら解いても全ての数字が出ないじゃないか。問題作成ミスだろ」
一真は問題文と答えを見せた。それを繁々と眺め、安出は言った。
安出「問題ございません。確かに私が旦那様から受け取った問と答えです」
一真「なにぃ?」
三和「あれ、一真兄さん、もう解けたの?」
一真「三和か、そうなんだが、左の2桁しか判らないんだ」
三和「あれ?僕のは右2桁しかわからなかったんだけど……」
次の日
雄二「やっと解けたけど、この分じゃもう無理だなぁ。あの捻くれ親父、最初から俺に遺産渡すつもり無かったのかねぇ」
そうぼやきながら箱のある部屋に入ると、そこには安出、一真、三和が待っていた。
雄二「何やってんだ?お前ら」
一真と三和は無言で答えを書いた紙を差し出した。
雄二「……」
全員が出した答えを組み合わせてダイヤル錠を回すと、カチリと錠は外れた。その時を待っていたかのように安出は言った。
安出「おめでとうございます。遺言に則り、遺産は三等分とします」
一真「いやいや、ちょっと待てよ!一番先に解いたのは俺だ!全部とはいかなくても一番貰えるべきだろう?」
安出「お忘れですか?遺言の内容を」
一真「いや、だから、一番先に解いた奴に渡すって話だっただろう?」
雄二「あっはっは!」
黙って聞いていた雄二が突然笑い出した。
一真「なんだ?雄二?何がおかしい?」
三和「一真兄さん。それは違うよ。父さんは最初に解いた人じゃなくて、最初に箱を開けた人に渡すって言ってたんだよ」
一真「!!」
安出「さようでございます。今回箱を開けた時、御三方がこの場に居られましたので同時と見做します。これは、その遺言状にも記載されています」
開けた箱の一番上には遺言状が広げてあり、確かに光成の字でそう書かれていた。
雄二「あの偏屈じじいのやりそうな事だ、最初から皆手の平の上だったんだよ。くっくは、笑えるね」
怒りに任せて一真が箱を蹴り倒した。その時足元に落ちた手紙を三和が拾い読み上げる。
三和「父さんの字だ。どれどれ?競い合い、切磋琢磨するのも素晴らしいが、協力し合い、大きな障害を乗り越えるのも又大切である。……だってさ」
雄二が更に笑い転げる。そんな様子を見つつ、一真は苦々しく呟いた。
一真「なんて……あまのじゃくな遺言なんだ」
その後三人が仲良く暮らしたかは定かではない。
あまのじゃくな遺言 レイノール斉藤 @raynord_saitou
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