大好きな人の夢

高透藍涙

第1話


頬をすべる指先は、ほんのりあたたかかった。これは、誰の手だろう。

もしかしたら、大好きな彼女のものかもしれない。

自分にとって都合のいいこの世界は、そのうち曖昧なままに途切れてしまう。

その時を思うと泣いちゃいそうだ。目をあけたら駄目だ。

言い聞かせて文字通り夢心地でいた。

きっと現実の眠る私は、頬をゆるめて幸せな寝顔を晒しているのだろう。

「大好きだよ」

ああ、なんて切ない声で言うんだろう。

同じ気持ちだと答えたいのに、言葉を発することは許されない。

自由にここにいられる代わりに声を発したら魔法はとけてしまうんだ。相手は、華奢な手を重ねてくる。私と違って、小さくて可愛らしくて女の子そのもの。こんなふうになりたくて、憧れる気持ちは、いつの間にか恋心に変わっていたっけ。あれから、一年、ずっと彼女を想い続けている。

好きを伝えられないまま毎日、友達としての関係を壊さぬように、気持ちをひた隠しにしていたけど……、え、今相手はなんて言った。

これは現実ではない。まさに、夢だ。

ふわり、柔らかな唇が、そっと触れて離れる。

やけにリアルな感触に、飛び起きた。朝の光りが部屋に差し込んでいる。

(もっと、ここにいたかったのに!)

優しい接吻(キス)をくれた天使に、会えたらどう声をかけよう。

「私も大好き」

伝えたら、君はずっと側にいてくれるのかな。

儚い妄想が、心を渦巻いて離れない。

唇に触れると、そこには温もりはなかったけど、いつか触れ合えたらいいのに。

携帯をチェックすると、彼女からメッセージが届いていた。

『おはよう。今日、話があるんだけど、

授業が終わったら教室で待っててくれる? 』

それだけ記された言葉に、頬が熱くなる。

直接、伝え合おう。

了解のスタンプを押して携帯を閉じた。

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大好きな人の夢 高透藍涙 @hinasemaya

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