読者や物語外の現実に矛先を向けないのにこの怖さ!

 不思議な能力に悩まされてきた少女が、ふとしたきっかけからクラスメイトの家に招かれ、そこで恐ろしい騒動に巻き込まれるお話。

 ゴリゴリのホラーです。この身の毛もよだつ怖さが魅力の核、という意味では間違いなく「ホラー」と言えるのですが、それをいわゆる「異能もの」のフォーマットでやってくれるところが面白い作品。

 まず「人知れず不思議な能力を備えた中高生の活躍」という時点で、少なくとも実話風のホラーよりはフィクション感が強い(=作り物という安心感がある)はずなのですが、それがこんなに怖いんだからもうたまりません。
 敵というか怪異の造形がやばい。なんですかこの胃の奥が重たくなるような不吉な感じ……。

 非常に隙なく完成されたお話で、いろいろと魅力的なところは多いのですが、特に好きなのはやはり話運びの巧みさ。先を気にさせる・期待を煽るのが上手いというか、特に冒頭のつかみは最高でした。
 能力そのものの面白さもあるのですけれど、それを本当に遺憾なく伝えてくれる感じ。

 また、不思議な能力はあるものの、それが直接の武器というわけではないところも好きです。
 普通ならもうどうともできない恐るべき怪異を、でもバトルもの的に(=単純に「強い力」としての能力をぶつけて)解決するのではないところ。
 とにかく好きなところがいっぱいあるのですけれど、でも一番はやっぱり「もう単純に怖い」というところが最高な作品でした。敵というか怪異が本当に大好き。