走れ、ウマ娘。②

♠「いや、ツッコミたくなる気持ちはわかる(笑)それでも、とにかく、十分に引き込まれる様なストーリーになってるねん!ちょっと、いや、かなり、九◯年代に流行した王道ギャルゲーの香りがするけど……」

♣「かなりどころか、そんな香りしか漂ってないけどな!」

♠「まぁ、そう言わずに、一度プレイしてみても……。基本プレイには、お金も掛かりませんので!」

♣「怪しい宗教の勧誘か!?ゲームの中身は、良いとして、他にどんな馬がいて、どのキャラが人気なん?」

♠「権利関係で、社台ファーム系と金子真人オーナーの持ち馬は、キャラクター化できないみたいなので、九◯年代に活躍した非社台グループの競走馬が多いな!男性プレイヤーに人気なのが、ライスシャワー。女性プレイヤーに人気なのが、アグネスタキオン。男女双方から人気なのが、ゴールドシップ(笑)!!」

♣「ゴールドシップ、人気なんや。まあ、現役時代から個性的と言うか、奇行が目立つと言う評判が多かったから、何となくキャラ付けしやすそう、というイメージもあるけど」

♠「アニメ以上に《変キャラ》としての地位が確立してるし、育成シナリオも、個別のシナリオ『ウマ娘ストーリー』も、ゴールドシップだけ斜め上を行くセリフと展開のオンパレードやから(苦笑)なんと言うか、『すごいよマサルさん』とか『ボボボーボボーボボ』みたいな『少年ジャンプ』のシュール系ギャグ漫画みたいなノリやねん」

♣「『マサルさん』に『ボーボボ』って……。たとえが古いわ(笑)!」

♠「しゃ~ないやん!アラフォーのオッサン同士の会話なんやし(笑)ともかく、このコンテンツが流行ってる理由は、主役に相応しい顕彰馬クラスから脇役が似合うバイ・プレイヤー、それに、ネタ要員のキャラクターまで幅広く揃えてるところに、人気の理由の一端がある様に思うのよ」

♣「オレも、アニメの方は観てたんやけど……。アニメの一期は、そこまで燃えるものもなかったけど、二期は、熱かったよな!!特に、ライスシャワーのエピソードとか……」

♠「ブンちゃん、現役時代からライスシャワー好きやったもんな!アニメのライスシャワーは、ストーリーも性格も良い味付けになってたと思うわ。ゲームの方でも、アニメのストーリー展開と同じくらいに、キャラクターが実装されて盛り上がったし、この辺りは、なかなか上手い手法やな、と思ったわ」

♣「そうなんや(笑)」

♠「ブンちゃんのハートを熱くさせた様に、実際、アニメの二期は、トウカイテイオーが活躍した九〇年代前半の競馬シーンをなぞる様なストーリーになってたけど、特に終盤にあたる一九九三年の暮れに向けての盛り上げ方は神懸かってたしな~」

♣「テイオー復活のきっかけをツインターボに託して、《あの》オールカマーのレースをあそこまでドラマチックに描くとは……」

♠「九三年のオールカマーって、ツインターボの爆走ぶりで、お笑い系レースの典型例やったのにな(笑)」

♣「あんな演出されたら、涙腺もゆるむって」

♠「アニメの影響で、YouTubeのオールカマーの再生回数が爆発的に伸びたりしたし……。あの頃の競馬シーンの熱さを共有できるようになったことは、ファンとしては嬉しい限りやな~」

♣「やっぱり、秀明も、競馬は九〇年代の方が面白かったと思うか?」

♠「『今の競馬は、つまらない!』とまでは言わんけど……。活躍馬は似たような血統、大レースを勝つのは同じ勝負服ばっかり、外厩が発達したことによるトライアルレース(前哨戦)の形骸化……。馬同士のライバル関係とか馬と騎手との関係も希薄になるし、そりゃ、競馬からドラマ性は無くなるよな、とは思ってしまうなぁ」

♣「やっぱり、そうか……」

♠「一九九〇年から二〇〇〇年までのJRA年度代表馬を並べると、社台グループの生産馬は、エアグルーヴの一頭だけやけど、二〇〇一年以降の二〇年間の年度代表馬を振り返ると、社台グループ以外の生産馬は五頭だけやからな~」

♣「あらためて考えると、ものスゴい寡占ぶりやな(苦笑)」

♠「ホンマ、『格差社会』とは、このことやわ(笑)。まあ、競馬に限らず、一極集中よりも、群雄割拠して多様性がある展開の方が盛り上がるのは、確かやと思うで」

♣「確かにな~」


九〇年代のリバイバル・ブームなのか?それとも・・・?


♣「しかし、『エヴァ』と言い、『ウマ娘』と言い、二◯二一年になって、オレ達が中高生やった九◯年代のリバイバル・ブームが来てるんか!?」

♠「メディア業界に所属してる人間が、ナニを言ってるの、ブンちゃん!『シン・エヴァ』も『ウマ娘』も、本来ならもっと前に劇場公開したり、サービス開始してはずのモノが、諸般の事情で計画が伸びただけやん。それが、たまたま今年になっただけやって」

♣「あ、やっぱり、そうか……」

♠「それに、二◯〜三◯年前の音楽やファッションが再流行するのは、メディア業界にいるオッサンたちが、決済権を握れるようになって、『自分たちが若い頃を懐かしんだ特集を組むから』やって、高校時代に教えてくれたのは、ブンちゃんやん!」

♣「そうやったっけ(苦笑?」

♠「そうやで!オレ達が、高校生くらいの時も、QUEENの楽曲が続けてテレビCMに使われたりしてたから、オレが『クイーンって、いま音楽業界で再評価されてるの?』って、ブンちゃんに聞いたら、『再評価されてるって言うより、単純にCMとかテレビ番組つくってるお偉いさんが、クイーンのファンなんやろう』って言って、さっきオレが言ったようなことを説明してくれたんやけど、覚えてない?」

♣「ぜんぜん覚えてないわ。さっきから思ってたけど、おまえ、良くそんな昔のどうでもエエこととか覚えてるな(笑)!」

♠「忘れたいこともあるけどな!高校一年の秋の頃の『シネマハウス〜』の放送で、ブンちゃん達を好気の目から守ろうとしたら、高梨センパイにハメられこととかさ(注5:『シネマハウスへようこそ』第八章を参照)!!」

♣「あ!それは覚えてるわ!!あれは、あの後『きらめき高校に転校してやる!!』みたいなこと言った秀明が招いた自己責任の結果やろう(笑)」

♠「正確に言うと、『ときメモのソフト買いに行くわ』やったと思うけど……。まぁ、ニュアンスとしては一緒やな(笑)」

♣「そうやろう(笑)?」

♠「でも、『ときメモ』のゲームシステムが、『パワプロ』のサクセスモードに進化して、今の『ウマ娘』に至ることをなかなか感慨深いかも!」

♣「サンデーサイレンス〜ディープインパクト〜コントレイルと続く血脈みたいな?」

♠「ブンちゃん!それ、『ウマ娘』世代には、通じへん例えやで!?」

♣「そっか……。いま、名前を挙げた馬は、アニメにもゲームにも出てきてないねんな」

♠「そうそう!それとゲームシステムの系譜の話しで思い出したけど、音楽のメロディー作りの系譜については、どうなんやろう?あいみょんの曲とか聞いてると、あれ?これ小沢健二の曲じゃね?って思ったりするんやけど……。これが、ブンちゃんの言う九◯年代リバイバルなのか!?」

♣「あいみょんは、狙ってやってるオマージュやと思うけどな。秀明の言ってる『マリーゴールド』とオザケンの『さよならなんて、云えないよ』に限らず、『愛を知るまでは』のサビは、まんまユーミンの有名曲の冒頭やし」

♠「あ〜、『魔女の宅急便』のエンディングのアレな!そうか〜、ユーミンか〜。ほな、九◯年代と違うか〜」

♣「ミルクボーイみたいに言わんでエエねん!」

♠「いや、昔の話しばっかりしてるから、今どきのネタも入れとかんとネ!」

♣「今どきって、もう一年以上前やないか、そのフレーズが流行ったのも……」

♠「それも、そうか(笑)ともあれ、九◯年代の文化がリバイバルしてるように見えるのは、自分たち受け手側が、大人になりきってない、というか成長してないからじゃない?」

♣「それを言われると、自覚があるだけにツラい(苦笑)」

♠「イイやん、別に!ブンちゃんがデビュー前から推してた川本真琴だって、ファースト・シングルで『成長しないって約束じゃん』って歌ってたし(笑)」

♣「その歌詞は、思春期の人間が歌うから価値があるのであって、中年のオッサンが言って良いことではないゾ!」

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