ウマ娘。はじめました

その一ヶ月後、秀明の元には、一通のメールが届いた。


--


件名:ウマ娘。はじめました


有馬秀明 様

お世話になっております。

坂野明聞です。

件名のとおり、JRAのCMシリーズで競馬熱が再燃し、スマホで『ウマ娘。』をはじめました。

初回ログイン特典で選んだ☆3のライスシャワーのシナリオを堪能したあとは、その他のウマ娘の育成に励んでいます!

そして、秀明の言ってた通り、ナイスネイチャのキャラとシナリオにハマりました。

育成の有馬記念とURAファイナルの後の『うまぴょい伝説』には、不覚にも目に潤むものが……。


(あのシナリオとラストのセリフは、反則やろう!!)


とりあえず、ホーム画面のウマ娘は、勝負服を着せたネイチャさんに変更して日々のゲームを楽しんでます。

TEAM RANKが、A1になったら、また連絡するので、『ウマ娘。』について語り合いましょう!

以上、よろしくお願いします。

P.S:

楽しませてもらったお礼に、ナイスネイチャのバースデードネーションに、寄付しようと考えています。

良ければ、一緒にどうですか?


−−


相手の興味のありそうな事柄から外堀を埋め、自分の薦めたい趣味に引きずりこむ、といういつもの手口に成功した有間秀明は、この文面を読み、


(ブンちゃんらしいな)

(ウマ娘ブームで、バースデードネーションその他によって、引退後の余生を幸せに暮らせるサラブレッドが少しでも増えてくれることは喜ばしいケド……)


と感慨に浸りつつ、「ゴメン」とつぶやいた。


(これは、高校一年の時に『パルプ・フィクション』を観に行った後と同じくらいの罪悪感やわ……)

(ガチャの渋さとデイリーミッションに掛かる時間の長さで、もう『ウマ娘。』は、半分引退状態ってことは返信しにくいなぁ……)


熱心に薦めた先駆者がアッサリと他に関心事を移し、半信半疑で始めた追従者が沼にハマる、という《オタク界隈あるある》が、ここでも見られたわけだが……。


(今は、昔ブンちゃんが薦めてくれた萩尾望都先生と竹内惠子先生のデビュー直後の『大泉(サロン)』のエピソードに注目してるんやけど、どう切り出したモノか?)


秀明は、次の話題を昭聞と共有する方法を模索し、


(とりあえず、ブンちゃんのことを良く知ってる身近な人間に相談してみるか?)


と、思案したものの、その相手に相談をした際の


「へぇ、ようやくカワイイお馬さんの相手には飽きたんだ(暗黒微笑レベル2)?で、今度は、なんの話しをしたいの(暗黒微笑レベル3)?」


という顔色を想像して、胃の辺りがキリリと痛むのを感じて、


(相談するにしても、言い方に気を付けんとなぁ……)


と、ため息をついて、ノートパソコンの電源を落とし、ふたを閉じた。

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シネマハウスへようこそ~番外編①~ 遊馬友仁 @totalfottball1

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