死に至る病、そして・・・②

♣「はぁ〜。この作品のセリフを会話に挟んでいく『エヴァ』世代特有の寒さも、もう今回で終わりにして欲しいわ」

♠「ゴメンゴメン!でも、この流れで観察すると、『シン・エヴァ』の本質が見えてくるやろう?」

♣「それは、そうかも知らんけどさぁ……。もう一回聞くけど、有間秀明としては、あのオチに納得いってるんか?」

♠「ブンちゃんの言いたいこともわかるけど……(笑)。シンジ君が真希波マリを選ぶということは、『出演した声優にフラれたり、匿名掲示板で心が病むほど叩かれました』『でも、そんな自分にも理解を示してくれるパートナーが居ます』って、メンタルをヤラれた女性が描くWEBマンガの『こんなワタシにも理解ある彼クンが居ます』と同じパターンということやからな〜(苦笑)」

♣「メンタルを病んでる人に苦言を呈すのは申し訳ないけど……。あのテのエッセイ風マンガの罪深さって、個人的な事情と言って良い『人間関係=恋愛による精神的救済』を一般的であるかの様に描いてることなんよな。そりゃ、庵野秀明さんは、オタクにも理解のある美人漫画家の安野モヨコ先生と結婚できたから良いかも知らんけどさ……。テレビ版『エヴァ』をリアルタイムで観ていた氷河期世代のオタクは、結婚どころか恋愛すら諦めざるを得ない人間も少なくない訳で……。それを、またも旧劇と同じく『アニメを捨てて、現実に還れ』みたいなメッセージで締められてもなぁ……」

♠「いや、今回の作品のメッセージは、『現実に還れ!』ではなくて、『現実と折り合いつけつつ、オタ趣味を楽しみながら、社会や周囲のヒト達に貢献しよう』ってことやと感じたんやけどな、個人的には。まぁ、そのメッセージも、自分を肯定してくれる存在に巡りあえた監督本人が感情的に充たされているからこそ言える訳なんやけど……。その存在が、必ずしも異性のパートナーである必要はないけど、ブンちゃんが言う様に、社会的・経済的事情で、そういう理想のパートナーに恵まれなかったヒト達に対して、説得力を持つメッセージではないわな(苦笑)『エヴァ』が、一九九◯年代に、あそこまで大きな関心を集めたのって、庵野監督の抱えていた生きづらさや葛藤による私小説的な心理描写が、戦後の経済成長が終わって、生きるための指針が見えづらくなり始めた時代に生きている視聴者に、見事に刺さったからやからなぁ……。ストーリーを統括した総監督と受け手である観客のどちらが悪いと言うわけではなく、テレビ版が放送された一九九◯年代と、現在の二◯二◯年代では、置かれた状況が変わりすぎて、作り手と受け手が共有できる問題が少なくなってしまったのかも……」

♣「そうやねん!今回の『シン・エヴァ』を肯定的に評価できる人間は、それなりに充たされている人生を送ってるんじゃないか、と思うわ」

♠「ブンちゃん、今の人生に充たされていないナニかを感じてるん(笑)?今回の作品も、賛否いろいろな意見が出てるけど、毎度のことの様に、観る側の個人的な事情によって、受け止め方が違うみたいやし(苦笑)。まぁ、その意味でも、『シン・エヴァ』のテーマが、作品の受け手である観客の状況と完全に乖離する前に、何とかカタチだけでも物語の決着をつけることが出来て良かったんじゃないの?いつもどおり『エヴァ』の現場の疲弊ぶりもドキュメンタリーとしてさらけ出してくれたし(苦笑)」

♣「そこに期待するとか、お前、性格ワルすぎやわ!でも、『プロフェッショナル〜』の番組を観て思ったのは、真の《プロフェッショナル》は、総監督・庵野秀明と現場の間にたって、日に日にやつれていきながらも、最後まで仕事を全うした鶴巻和哉氏ということやな」

♠「映像を見ると、明らかに、目が死んでたしな鶴巻さん……。実績も名声もある監督やのに、中間管理職の立場を全うするとか、スゴいことやな。あんなに慕われている庵野秀明という人物には、それだけの魅力があるということなのか?安野モヨコ先生が真希波マリなら、鶴巻和哉監督は、常にシンジ君を気に掛けてくれる渚カヲル君か(笑)?」

♣「もう、そういうことでイイわ。総監督は、最後の最後に『プロフェッショナル』の番組タイトルを全否定して終わっていったしな」

♠「あれも、フツーに考えればブーイングものやけど、番組ディレクターの女性相手にイキってしまう庵野秀明の人となりを確認できて、変な笑いがこみ上げてきてしまった(笑)。今回、ブンちゃんと話す前に、YouTubeにあがってる過去の庵野秀明インタビュー集を見返したりしたんやけど、こういうところだけは、昔から変わってないな。真希波が、シンジ君のことを『ワンコ君』呼ばわりする理由も、今回の『プロフェッショナル〜』の安野モヨコ先生の庵野評で理解できたしな!」

♣「ホンマ、プライベートが、作品にダダ漏れになるヒトやったんやなぁ……。それを考えると、アスカ=みやむー(宮村優子さん)に『昔は、アンタのこと好きだった』『私のことを好きになってくれてありがとう』とか言わせてるのは―――」


♠&♣「「最高に、『気持ち悪い』!!」」


♠「旧劇のラストに繋がって良かったやん(爆笑)」

♣「笑い事じゃないって!ひつこいようやけど、あんだけアスカに思い入れてた人間から見て、ラストになってのケンケンとのカップリングは許せるモノなんか?」

♠「エラい絡んでくるなぁ〜(笑)。さっきも言ったけど、アレを肯定的に解釈すれば、今回のケンスケの描き方って、『オタクなりに、自分のオタク知識を活かして、周りのヒトに優しくなろう』って、ことを言いたいんじゃないの…………?いや、知らんけど(笑)」

♣「ホンマに、そう思ってるか?」

♠「あら、納得してくれませんか?まぁ、今回も無駄話しに付き合ってもらったお礼に答えさせてもらうと、公式のカップリングに納得できなかった分は、二次創作で補おうかな、と。アスカに関しては、旧劇の後日談として『RE-TAKE』という同人誌の大傑作が生まれてるからね。あと、短編でも『エヴァのアスカと少し大人なシンちゃん』とか……。どちらも、後にプロの漫画家さんとして、作品がテレビアニメ化されるくらいの実力派が描いてるアスカ本があるから、その辺りを拠りどころに、《魂の補完》をさせてもらってる感じ?」

♣「そうなんや……。その方面に救いを求める手もあるのか……」

♠「まあ、自分は、普段、二次創作の作品に手を出すタイプではないんやけど、これだけは例外かな……(笑)。二次創作の同人にハマってるヒト達が、『公式(原作)を超えた!!』って、言いたくなる気持ちも少しわかるようになりました」

♣「そっか……。同人誌にも、そういう効用があるねんな……」

♠「あと、最初の方でも話したけど、『シン・エヴァ』本編には、『オタ趣味を楽しみながら、社会や周囲のヒト達に貢献しよう』っていう、『王立宇宙軍オネアミスの翼』とか『シン・ゴジラ』から通低しているメッセージもあると思うし、それを体現している相田ケンスケの元には、アスカが居る訳やから、アスカの呪縛から逃れられないオタクは、ケンスケをロールモデルに生き方を見つめ直すのも良いんじゃない?『シン・ゴジラ』の時は、災害対応に活躍するオタク像を支持してた観客も多いみたいやし(笑)」

♣「なるほどなぁ……。良くわかったわ。けどさぁ……。せっかく秀明と『エヴァ』を語るなら、《このシーンがスゴかった!》とか、《あの演出はアニメ史に残るな!》とか、そんなことを語り合いたかったなぁ」

♠「それな(笑)!確かに、その視点で観ると、今回は、あまり熱く語れる演出とかは、なかったよな~(苦笑)ネットの反応とか見ても、最初は、みんなカップリングの話ししかしてなかった感じやし……」

♣「やっぱり、そうなんや(苦笑)」

♠「これを『オタクの知性の劣化』と嘆く声もあるけど……」

♣「いや、今回の作品で、他に何を語れというのか(苦笑)?アスカとシンジ君のカップリングが成立しなくて、発狂する有間秀明を見るのを楽しみにしてたのに(笑)」

♠「それは、ご期待に添えず、申し訳ない。さっきも言ったみたいに、素晴らしい二次創作作品に出逢えたら、《欠けた心の補完》も可能なのよ!それに……」

♣「それに?」

♠「いま、自分のスマホの中には、ツンデレ可愛いダスカちゃんこと、『ウマ娘。プリティ・ダービー』のダイワスカーレットが、いるからね!!」

♣「………………(絶句)」

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