シネマハウスへようこそ~番外編①~
遊馬友仁
死に至る病、そして・・・①
エヴァンゲリオン、ついに完結(?)
♣「おかえり、秀明!そして、帰国お疲れさま。この時期、海外から戻ってくるのは、大変やな(笑)」
♠「ホンマ、一年ちょっと前まで、国外への移動が、こんなにも大変になるなんて想像も出来へんかったわ。今回も向こうを出国する三日前までにPCR検査の陰性証明を提出しないといかんかったし……。さらに、羽田空港に着いてから、二週間の自主隔離生活!この期間に、Netflixとアマゾンプライムが無かったら、退屈で死んでたと思うわ(笑)日本でも緊急事態宣言が解除されて、ようやく少し移動もしやすくなってきたみたいやけど……」
♣「で、わざわざ、この時期に日本に戻ってきた理由は?」
♠「そら、『ブンちゃんに会いに来た!』…………。と、いうリップサービスは、真に受けてくれへん、よな(笑)?」
♣「当たり前や!この非常時に、そんなこと言うてたら、朝のワイドショーで、『若者の気の緩みが……』とかって、叩かれるで!!」
♠「エライ、すんません。もう、すでに若者という年齢でもないけどな(苦笑)。うちの家庭内では、仕事より『ブンちゃんに会いに行く』って言うた方が、スムーズに話しが進んだから(笑)ホンマは、春からの仕事の関係で、どうしても三月中に日本に帰って来る必要があったんよね……。このタイミングで、関西でも首都圏でも緊急事態宣言が解除されて、マジで助かったわ」
♣「そうか。仕事の中身は話されへんこともあるやろうから置いといて、今日のライブ配信の中身は?」
♠「それは、もちろん、『シン・エヴァンゲリヲン』観てきたよ!って、ことなんやけど(笑)」
♣「あ〜、やっぱり、その話しなん?おまえに言われたから、先に映画観てきたけどさぁ……。『テレビ版の放映会開始から二十五年以上も掛けて、これで終わりなん?』って言うのが正直な感想やわ。秀明に確認しておきたいんやけど、アスカにイレ込んでた人間として、あのストーリーには納得いってるんか?」
♠「やっぱ、そこ気になる(笑)?LAS(注1:『ラブラブアスカとシンジ』の略)派の自分としては、『なんで、ポッと出のコネメガネが選ばれるねん!』と言いたい気持ちもあるけど……。確か、ブンちゃんとは、高校の時の『シネマハウスへようこそ』の放送でも、『綾波か?』『アスカか?』で揉めてたもんな!(注2:『シネマハウスへようこそ』第十二章および第十三章を参照)」
♣「懐かしいな〜。最後は、吉野さんのカヲル君とシンジ君のカップリング話しに押し切られたって記憶があるんやけど……」
♠「そうやったなぁ〜(苦笑)ホンマ、今回の劇場版の内容を考えると、『綾波だ!』『アスカだ!』『いや、シンジ君に相応しい相手はカヲル君だけだ!!』って、主張し合ってた我々がバカみたいじゃないですか?って感じやったな」
♣「実際バカみたいな話しなんやから、仕方ないやろ」
♠「確かに……(笑)。ただ、アスカ派としては納得できへんけど、庵野秀明ファンとしては、あのラストは、『まぁ〜、そうなるよな〜』と思わざるを得ない、と言うところもあるねんな……(苦笑)」
♣「自分としては、秀明が前から言ってた『真希波マリ=安野モヨコ説』を受け入れてなかったから、あのストーリー展開に納得いってなかった部分もあってん。けど、NHKの『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』(注3:二◯二一年三月二二日放送)を観たら、お前の自説を受け入れざるを得なかったわ」
♠「ブンちゃんも観てたんや!!まぁ、『真希波マリ=安野モヨコ説』は、半分ネタみたいなもんやけど……。ただ、オレも、あの番組を観たから、ここで話したい欲求が高まってたんよ!いや〜、スゴい内容やったな。ある意味、あの番組こそが、事実上の『エヴァンゲリオン』最終話ってことで良かったんちゃう(笑)?」
♣「う〜ん……。四年間も密着して、あの内容は、テレビ番組を制作する人間からすると、頭を抱えざるを得ないわ。番組制作側も取材対象に対して、多少キレ気味なんじゃないか?ということが伝わってきたし……」
♠「そっか〜。テレビ番組つくるヒトからすると、別の意味でシャレになってない感じなんや……。個人的には、庵野秀明という御仁の、こじらせぶりと愛されぶりが、あらためて確認できて良かったな〜、と思ったんやけど(笑)」
♣「他人事やったら、何とでも言えるやろうけどさ……。四年間の密着取材で、異例のゴールデン枠の放送にも関わらず、視聴率も二桁を切ってるし、民放と公共放送は違うかも知らんけど、放送翌日に上司の顔を見るのことを想像したら、怖くなって、背筋が寒くなる内容やったわ」
♠「それでも、『シン・エヴァ』を観て、モヤモヤとしてた気持ちが、スッキリした部分もあったやろ?」
♣「気持ちの良いスッキリじゃなくて、こんな《監督の個人的な感情》に左右されるストーリーに、自分たちは夢中になってたんか―――。って言う醒めたスッキリ感に近かったけどな、個人的には……」
♠「番組を観た感想としては、ブンちゃんみたいな意見も多いみたいやな(苦笑)。それでも、テレビアニメ放送開始から二十五年経過して、延々と続いてきた『不毛なエヴァ談義』にも、ようやく終止符が打たれようとしている、と思うと感慨深い……。そう、『新世紀エヴァンゲリオン』とは―――」
♠&♣「「庵野秀明監督の個人フィルムであった!!」」
♣「『エヴァンゲリオン談義』の中身の話じゃなくて、『エヴァを真面目に語ること』自体が不毛だったと感じさせられたんやから、もう、そんな風に自分を納得させるしかないよな……」
♠「まあまあ、そんな悲観的にならんでも(笑)。けど、主演声優の緒方さん・林原さんたちが、旧劇(TVアニメの放送後に上映された劇場版の旧シリーズ)の頃に、口を酸っぱくして言ってた様に、『エヴァは楽屋裏を知るとハリボテ』と言う言葉は、的を射ていた、と……。実際、今回の見せ場であるはずの初号機と拾参号機の戦闘シーンは、特撮映画のカキワリというか、文字通りハリボテの前で戦ってたし」
♣「あれは、監督の好きな『ウルトラセブン』のメトロン星人のエピソードへのオマージュやろう?でも、もう今さら、あの描き方でメタ・フィクション感を出すことに関心が集まるとかないで!昔の押井守作品やないねんから……」
♠「確かに、あのシーンを面白いと思って入れてるなら、思いっきり滑ってるよな(笑)。でも、監督・庵野秀明のアタマの中身を知りたいと思ってるオレみたいなタイプからしたら、やっぱり興味深い部分はあるんよ」
♣「それは、映画評論家の仕事としてやろう?ただのファンとして観てたら、そんなん関係ないからな!」
♠「いや、これは仕事に関係なく、個人的な所感なんやけどな(笑)。他にも、『シン・エヴァ』冒頭のパリでの戦闘シーンは『ナディア』のセルフ・パロディやろうし、空に浮く空母や戦艦群は、『ヤマト』へのオマージュ。今回、話題の農村のシーンは、師匠の宮崎駿的な農本主義へのリスペクトか、これも、『ナディア』のセルフ・パロディ(笑)。テレビアニメの頃から繰り返されてる古い電車や工場群の影は幼少期の心象風景なのかなと思うし、今回は、最終章ということもあって、碇ゲンドウの心理描写を増やすことで、自分の父親との葛藤も克服しつつあるんやね、って感じやから。そして、シンジ君=庵野秀明を本当の意味で救ってくれるのは、綾波でも、アスカでもなく―――」
♣「『胸の大きい良い女』って言いたいんやろう?」
♠「『ご名答』(笑)」
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