虐げられた少女を救い出すもの

 家族から散々に虐げられてきた少女が、ある日家に来た機械人形によって救われる物語。

 寓話風のファンタジーです。
 家族から理不尽な虐待を受けながらも、己の心を殺して耐え続ける主人公。彼女が初めて見せた自分自身の欲をきっかけに、運命が大きく変わるシンデレラストーリー的なお話です。

 序盤の虐げられっぷりっというか、どうにもならないどん詰まり具合が好きです。
 もう健気とか通り越してひたすらしんどい。心を殺して盲目的に従うしかない状況が、彼女自身の主観から一人称体で綴られるのが、もうあまりにも救いがなくて最高でした。

 そして、そのカタルシスを解放してくれる機械人形さんの、そのなんでもあり感あふれる無敵の造形も。
 白馬の王子様でもありまた魔法使い役でもあって、ぶっちぎりの強キャラなのに主人公に付き従う存在であるという、もう読者のあらゆる欲望にひとりで応えてくれるこのオールマイティっぷり。
 古典的な童話の趣がありながら、独特で個性的な雰囲気のある作品でした。