第2話 予想現在地
「と・・・とりあえず、落ち着くのだわ・・・」
港都市シドから北上して世界貿易都市グルダへ。
その途中、船をクラーケンに沈められた。
そして、現在無人島。ここまではいいのだわ。
「だとすると・・・ここから西側にシドやグルダのあるオースチン大陸が・・・見えませんわ・・・」
航路的にそれほど外洋を通るルートでは無かったはず。
だったらある程度、西へ進めばすぐにでも陸地につくはずなのだわ。
私は砂浜に今居る場所のおおまかな地点を予想して書いて。
オ 〇l ←グルダ
ー l
ス l ★←現在地
チ l ↑
ン スパイク連峰l 航
大 l 路
陸 l
〇l ←シド
「うん。だいたいこんな感じなのだわ」
あとはとっととこの無人島を脱出すればいい。
それだけなのに、それだけが唯一の問題だ。
「この無人島から出る手段がないのだわ~」
この島を一周しても海岸、砂浜には船どころか小さいボートすら無かった。
当たり前だ。だって無人島なのだから。
「風魔法で空を飛んで!・・・行けたらいいのに・・・」
私の風魔法の
・・・連続発動しても陸地に届く前にあっさり魔力切れになりますわ~。
「ボートを作って脱出する。・・・どうやってボートなんて作るのかしら?」
ミリーナ・フォン・サマルオムス。子爵令嬢。12歳。
生まれてこれまで、日曜大工からは無縁であった。当たり前である。
「・・・イカダ!イカダなら出来そうなのだわ!
魔法が使えるのでローブは持っていた。惜しい、一文字違いだ。
「困ったのだわ~」
▼▼▼
「水は・・・水魔法で問題無いし、湧き水も見つけられたのだわ」
脱出する方法が無いので、とりあえずこの島にしばらく滞在する方向に舵を切った。
「食べ物は・・・
魔法袋。私のは容量は小さいが時間停止が付与されている高級品だ。持ってて良かった魔法袋。
「・・・唯一の食料は、御爺様のお土産にと作った
「今後は魔法袋にお菓子を沢山収納しておくことにするのだわ~」
空腹を我慢することなく貴重な食料を目減りさせていく。
さすが一人っ子の子爵令嬢。我慢という文字を知らぬか。
「お風呂・・・土魔法で湯船。水魔法と火魔法でお湯。・・・出来ますわね」
空腹が満たされ、潮風でベタベタになった髪を不快そうに触る。
魔法でサッと作りササッと入浴。持ってて良かった洗髪薬。
「ベッド・・・土魔法。下に敷く物は・・・ローブしかありませんわね・・・」
風呂から上がり、風魔法で髪を乾かし寝床の準備をする。
お気に入りのパジャマは汚したくないので、普段着で寝る事にする。
そう、レディは食べ物は持ち歩かないが服に関しては沢山収納しているのだ。
「とりあえず、今日はこれくらいにして明日から頑張るのだわ~」
即席ベッドの上で横になり広がる星空の下でゆっくり眠りにつく。
・・・意外とサバイバル生活に適正ありますわね、私・・・。
▼▼▼
「さて・・・今日から本気を出すのだわ」
こんな環境でもしっかり睡眠をとった私は、昨日挫折した無人島脱出の方法を改めて考えた。
「土魔法でボート。・・・重さで沈んでしまいますわね」
考えると脳が糖分を欲するので焼き菓子を食べながら考える。
「丸太に帆を立てて、風魔法で進む。・・・いけそうですわね!・・・丸太が回って海に落ちる未来が見えましたわ・・・」
こう、丸太がクルッと回ってね。容易に想像できますわ~。
「やっぱりイカダが一番簡単なのだわ~。・・・ロープの代わりに、洋服を裂いて・・・ぐぬぬ」
魔法袋には服が沢山収納されている。容量の8割ほど。
虫食いや色落ちの心配がないから時間停止の魔法袋はクローゼットに最適なのだわ。
「・・・わ、私のお気に入りの洋服達を・・・ひ、引き裂くなんて・・・」
私に・・・果たしてそんな残酷なことが出来るだろうか?
まだ一回しか袖を通していないパーティ用のドレスは絶対駄目として・・・
「・・・ロ、ロープ代わりにするのは必要最低限にするとして・・・」
今度はどの服を
考える⇒脳が糖分を欲する⇒焼き菓子を食べる。
無意識に手が動き、ついに・・・
「・・・無くなってしまったのだわ・・・」
無人島生活、実質1日目にして貴重な食料が底をついた。
リトルレディ・ミリィの諸国漫遊録~帰宅まで、あと〇〇キロなのだわ!~ 円華流(おうかりゅう) @OHKARYU
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