第11話「神の希み」とは?


 ロボット学者の石黒浩は未来の人間は機械に置き代わると説く。脳はAIに置き換わり、手足は原始的な肉体から精密高性能な人工品に置き換えられ(すでにパラリンピックアスリートが採用している)、臓器や各器官はIPS細胞の培養とDNA操作と精密工学をミックスした完全パーツに置き換えていく(部分的には既に実用化が始まっている)。

 果たしてそのアンドロイドはその全身の情報ネットワークと脳の情報処理能力と全人類との共感形成による「スーパーブレーン」との関わりによりどのような「自分という認識と意識」を持つのか興味深い。


 数百年単位の先の未来世界を想定し、一つの超楽観的物語を仮定してみる。

単純にそれまでに人類が得られているだろう成果として期待できるのは、病気と感染症の克服だろうと推測される。資源やエネルギーの過不足も宇宙の天体資源やエネルギーの活用や廃棄場所としての利用が進むことにより解消され、食料の過不足も克服され、衣食住の確保も行き届き、貧困も克服されるだろうと推測される。そして繁殖に関わる問題も医学的には全てが解消され、最適な人口数と分布という社会的問題も同時に解消されることになるだろう。現在の動植物の生態系の維持のようなシステムが人間社会にも適用され、世界の人類の数と分布と種別保存の最適化管理は完全にシステム化され、ルール化することになるのだろうと思われる。食べること、繁殖すること、病気をしないこと、衣食住が完全に保証されること、そしてそれらが完全に合理的な管理システムにより営まれる世界が保証されると、国家の権力機構の機能はほとんど意味を為さなくなり、従って世界から国境は実質全廃され(進化ユーロ方式)、国は文化地域としてのみその形を留めることになるだろう。

 人類の欲求水準は「自分意識」の高度化に比例し、物質的欲求や承認欲求などは過去のものになり、超越的な自己実現欲求に到達している為、権力欲を持つ者も存在せず、権力者の必要性も存在も消滅し、世界の様々な領域の健全・安心・文化的な生活が保証される管理システムがあり、その管理業務のチームとリーダーが組織的かつ合理的に機能するだけになる(進化北欧方式)。

 古代の資本主義による物質的繁栄の負の遺産だった地球的環境汚染、自然破壊、温暖化、核兵器廃絶や軍備の解消の問題も解決され、世界中の各地域と地方それぞれが特色を持った地球丸ごと自然公園のようになるだろう(英国方式)。

 そこでは人間は物理的な耐久年数である約120年の生涯が基本保証されることになると思われる(天災被害は除き)。人間の死を受け入れるという長年の大きな課題も、基本生涯が予め明確なこととでその受け入れプログラムが安定して機能できるようになり、すべての人間は「我が天国の物語」をバーチャルリアルで愉しみながら何の不安も恐れもないTHE ENDを迎えることが可能になるかもしれない。

 20数万年続いた原始的肉体を持つことによるネガティブ条件の問題、課題が全て解消された全人類は、完全にネットワーク化された「スーパーブレーン」の元で、人類の究極の使命である「自分の物語の創作」に全集中できる社会を獲得する状況になっているだろうと思われる。

 世界中の全「自分意識」がネットワークで繋がり、ビッグデータが繋がり、AIが集結すると、集合された「世界という認識と意識(スーパーブレーン)」は果たしてさらに超越した「究極の超越自然」になれるのだろうか?そしてそれは何を意味するのだろうか?    

XX億人の全員参加型直接民主主義が完全成立するのだろうか? 

XX億人全ての個人データベース(性質、体質、気質、嗜好、指向、収支、資産、血筋と血縁関係、あらゆる経歴と社会行動実績、関連情報など)が中央管理され、権利と責任と役割が管理され、罪と罰と教育、再教育が管理され、「ゆりかごから墓場まで」の完全な生活ケアーが保証されたりするのだろうか?

「神の子」の出現により、人間の翻訳を介さない真の神の存在と意思が見えてくるのだろうか?

そこを起点にして「全宇宙の意識」との交信が始まったりするのだろうか?

これまでの人類の次元や時空を超えた物語が次々に生まれ、タイムマシーンなどなくても「究極の超越自然」の力により描かれた物語とその物語をバーチャル体験できる高度技術により、138億年の時空を自由に移動し、好みの物語を楽しみ、毎日ドキドキワクワクする日々が過ごしたり出来るのだろうか?

それらはどんな物語なのだろうか?


そういう未来社会での〝ゆらぎ″とは何を意味するのだろうか?

地球上に存在する人類全てとさらには宇宙のコミュニケーターまで含めた対象と紡ぐ無限の物語は、あらゆる可能性に満ちたものになるに違いない。

そして得られた物語は?

喜びと悲しみの落差の大きい社会?しかしそれもバーチャルリアリティ物語?

愛と憎しみに満ちた人生?もちろんバーチャルリアリティ?

生と死が常に隣り合っていて、ハラハラドキドキする日々?もちろんバーチャルリアリティ?

〝色即是空″〝空即是色″。〝無い″が基本で〝在る″は虚像。その究極世界。


果たして、どんな新しい物語が、そこにはあるのだろうか?



本当の未来、神の希む未来。〝ゆらぎ″の未来形。

それはまだ誰にもわかっていない。 

この謎解きという愉しい物語創りは、未来を担う若い仲間に託そう。


そうして、ペンを置く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「超越自然」138億年の物語 オジャマ虫 @ojamamusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ