第10話「神」とは?
人類は始め大自然に畏怖の念を抱いた。
人間はあまりにも無力だったので、事あるごとに祈りをした。狩が成功することを祈り、収穫が得られることを祈り、無病息災を祈り、戦いに勝利することを祈った。天変地異では生け贄を捧げて救済を祈ったりもした。
長らく、祈りの対象は彼らが最も偉大で強大なものと認識していた大自然であった。しかし便宜的に、時にはそれを象徴する代替えするものや代理役を務める者が対象を務めたりもした。
そんな素朴な時代を経て、時が過ぎて、やがて代理役を務める者が、神なる物語を創り上げ、自分はその使徒であるという立場を唱えるようになった。やがて世界にはいくつかの有力な神なる物語が現れ、それぞれが巨大な宗教として発達し、世界に拡大するしていくことになった。
聖書、経典、コーランなど様々な神の教えがあるものの、いずれにしても全てそれらは、人間である神の使徒による、神の意思の翻訳物語の位置付けでしかない。
さらに最近では、大自然に対し人間が昔ほどは畏怖の念を抱かなくなったせいもあり、神の使途による翻訳物語自体にもかつてのような説得力はなくなってきた。
歴史を紐解けば、神の物語同士の対立と衝突が数多く発生し、多大な犠牲と不幸を招いたことも少なくない。これまでの神という理解の限界は明らかだ。
神の真の意思、すなわち真の「神の意識」をもっとダイレクトに知る方法はないのだろうか。神の使徒の翻訳など介さずに。
始まりで考えてみる。万物の創造主を科学的に解明すると、それは「〝無″のゆらぎ」ということらしい。仮説ではあるが有力な根拠がある。
直近の到達点で考えてみる。人間の知る限り、それは「人間という認識と意識」だった。それは途方もない文化、文明とその産物をもたらした。そして無限大の物語を創作できる可能性を持つに至った。
その2点を結ぶ先を眺めると、もしかしたら「神の意識」が見えて来るかもしれない。
神の意識、神の希む未来、それはいったい何なのであろうか?
2点に共通するのは〝ゆらぎ″だ。
そして始まりは〝無″。現状到達点は無限大に創られる物語。そうするとその先の未来は?
〝ゆらぎ″を前提にした“無″から始まり、無限大に創られる物語を経て、やがて辿り着くもの?
それが神の希む未来?
それは一体何を意味するのか、
今はまだ誰にも分からない。
どのような仮説も、それを示す物語も、まだ現れてはいない。
未来社会の物語を映画で表現したスターウォーズなどは単なるお伽話にしか過ぎない。
世界が唱えている未来目標SDGsなどは、これまでの人類がもたらした負の遺産を埋め合わせしようとする近未来の現実的な課題に過ぎない。
しかし、数年前に世界に突然彗星の如く現れたスエーデンの少女グレタ・トゥーベリさんは国連で大演説を行い、地球環境の危機を訴え、世界中のリーダー達の欺瞞を批判し、行動することを訴えた。バックにカーボンゼロを新しいビジネスにしようとしている巨大金融資本があるとか、グリーンパーティのような政治勢力がいるとか、発達障害の問題児少女がエキセントリックな社会活動を行い、それにマスコミが乗ったのだとか、様々に言われているが、彼女は厭わずに清濁合わせ飲む器量を持ち、トランプやプーチンと互角に皮肉のツィートをやり合ったりする。世界中のマスメディアも上手く活用する。結果的に地球規模で2050年目標にCO2排出ゼロ化を実現するという世界の流れが一気に行動化した。
文化文明の加速度的発展が世界の閉塞感と危機感を一気に早めたという見方がある。その背景は近代からの資本主義という社会経済システムであり、拡大再生産という効率であり、物質的繁栄という効果であり、膨大な化石燃料というエネルギーを消費した結果である世界の環境汚染と地球的温暖化、あらゆる生態系を変化させて78億人にまで増えた人類という結果なのだ。そして全人類は自らを何回も滅亡させるうる核兵器を保有し、危うい均衡の上で生活をしている。そして、そのタイミングで世界中の若い世代に新人種が誕生しつつあるという説がある。
グレタ・トゥーベリさんのような少年少女が世界各地に突然現れ、これまでの人類の能力をアッサリ乗り越える言動をする。また結果を出す。そしてその数が世界を圧倒するようになった時、「超越自然」は人類のステージを変えることになるのだろうか。
ホモサピエンスから進化した「神の子」が現れたりするのだろうか?
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