ケモ化偉人伝『ネコの子はゴリラ』

 彼の父は生涯に渡って彼を嫌悪していた。

 彼がとても猫とは思えぬ風貌と図体をしていたからだ(彼の父は涼やかな美貌の黒猫であった。嫁いだ娘もそう)。

 風説かぜのうわさによれば彼は実の父の息子ではなく上司の息子であるという。

少なくとも父はその事を信じていた節があり、その図体を含めて軽んじていた(実際周囲からは、猫というよりはゴリラに見えていた)。




 長良川に対峙した時、彼の父は始めて

「あれは自分の息子にゃ」

と感じたようだ(そして、義理の息子に対する評『あれがわしにゃの息子の上につくにゃろう』を後悔した)。

 それほど、巧妙に父を追い落とした。

 方法は単純シンプル

『我こそは奴が裏切った上司の息子だゴリ』

と、反逆ではなく、正統性があると主張し、触れ回っただけである。

 しかし、単純であるが上に効果的で

「あのゴリラは、実は正統なこの国の支配者にゃのか」

と、武将たちは、軒並みゴリラもとい息子の方についた。




 父を倒したのち彼は自分の署名に古の中国の父殺しの故事から『はん』と言う物を使っている。

 彼自身にも了解できなかったのだろう。




 1561年(永禄4年)6月、斎藤さいとうよしたつ病没。

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