タカオくん
こくまろ
タカオくん
タカオくんはクラスで一番の物知り。特にお化けや妖怪が大好きで、この手の知識なら誰にも負けません。
「山姥だけじゃなくて山爺って妖怪もいるんだよ。目が一つで足も一本しかないのさ。」
「山で大声を出すと声が返ってくることを山彦と言うけど、これも実は妖怪なんだよ。」
「へぇーぼく知らなかった。」
「タカオ君はなんでも知ってるなぁ」
「まるで妖怪博士だよ」
クラスのみんなに褒められてタカオくんは鼻高々です。
でも、教室の隅でそれを聞いていた乱暴者のシゲオくんはおもしろくない様子。
「なにが妖怪博士だ。偉そうに知ったかぶりして喋ってるだけだろ。天狗になってんじゃねぇや」とボソッと呟きました。
すると、シゲオくんの近くでそれを聞いていたヒロキくん、"妖怪"と"天狗になっている"という符合がなぜだかとてもツボにハマってしまったらしく、大声でげらげら笑い出しました。
「そ、そうか。タカオが妖怪に詳しいのは自分も妖怪だからなのか。そりゃ天狗なら妖怪のことにも詳しいよな、アハハ、ハハハ。」
離れたところで突然沸き起こった揶揄が自分に向けられていることに驚いたのか、さっきまで得意気だったタカオくんは顔を真っ赤にして黙りこくってしまいました。
すると、それを見たシゲオくんは
「あっ、タカオの奴、顔が真っ赤だぞ!やっぱりこいつの正体は天狗だ、天狗!」
と、ヒロキくんにかぶせるように笑って言いました。
見ると、さっきまでタカオくんを褒めそやしていた近くの級友達もクスクス笑っています。
シゲオくんとヒロキくんはますます調子に乗って囃し立てます。
さっきまで平和だった教室に、だんだんと嗜虐的な空気が満ちていきました。
あははははは
いひひひひひ
てんぐだって
くすくすくす
ぎゃはははは
級友達の視線と嘲笑を一身に浴びながら、タカオくんはギュッと拳を握りしめ、俯いたまま頭の中でぐるぐると考えているのでした。
(正体がバレてしまった……殺さなきゃ……全員すぐに殺さなきゃ……)
タカオくん こくまろ @honyakukoui
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