どういった風にレビューをしたらいいものか、悩ましい作品です。
いくら見た目に関して寛容になろうという風潮がある現代でも、やはり【髪】というものは人の印象を大きく変えるわけでして、
その生え際が後退するということは、すなわち社会人にとって死活問題になるわけです。
主人公の男性はそんな迫りくる死に怯える人物。
小言を発する部下に腹を痛めたり、
周囲のひそひそ話が自分のことを指しているのではと不安になったり、
ワカメを貪り食ったり、
力尽きた毛根に向けて餞別の言葉を捧げたりと、
実に懸命にあるあるを実践していきます。
怒涛の勢いを持った文章で進んでいく物語の果てに、遂に事実が露呈し――
不意打ちって凄い威力あるんだなあと思った一作でした。