第63話 カラドギア皇帝


 男は目の前で蹂躙されるエルフの女をつまらなそうに見ていた。


 うめき声を上げながら男達に弄ばれている女は、レーグランド神聖国からの使者を名乗り、亡命者の引き渡しと、今後のエンハイムに対する方針を話し合う目的で来たとの事だった。

 しかし、エンハイムを単独でも征服できる自信のある男にとっては交渉は無用であり、亡命者を引き渡す理由はなかった。なにより一番の理由は女から得体のしれない違和感を感じたことで捕らえることにした。


「おい、お前らもう無駄だぞ、どうやら逃げられたようだ」


 捕らえたあとに拷問を加え、精神的に追い詰めてみた。だが既に彼女の中にいた別の何者かは去った後で、それを察した男はこれ以上得られるものは無いとの判断から男達に声を掛けた。

 しかしエルフの女を犯していた男達は笑いながら答える。


「いや、これはこれで中々いい感触なので完全に使い潰しても良いですか?」


「好きにしろ」


 そう言い残すと男は完全に興味を無くしその場を去り自室に戻る。


 前世でも女を犯し尽くし、この世界に転生してからも好きなように女を抱いてきた男だが、もう自分になびくだけの女や意思の無い女には興味がなかった。


 男が興味あるのは前世で自分を二度も裏切った女。一度は散々犯したのに関わらず、恐怖に屈せずに警察に訴え、二度目は結婚していた旦那を人質に快楽漬けにして、裏切るように差し向けた。それにも関わらず最後の最後で軟弱な旦那の方を選び自分を殺した女。


 黒い影がこの世界に導いたときに聞いた、あの女もこの世界にいるとの言葉を信じ、帝国の実権を握ると各地に密偵を放ち情報を集めていた。


「オギリス様、ご報告が」


 聞き慣れた声が耳元に届く、密偵の中でも優秀な男で家族を人質にして言うことをきかせていた。

 

「なんだやっと見つけたのか?」


「はい、可能性として高いかと」


「名は?」


「リグレスカーマ・グラシャス。エンハイムの元女公爵です」


「なに、かの銀髪鬼がそうだったというのか?」


 オギリスも噂だけは聞いていた女がまさか探していた人物の可能性がある一人だったとは思いもよらなかった。


「はい、ご子息である現公爵がお探しの女の名で彼女を呼んでいたとのことです」


「……それはかなり期待できるな。まさか探し求めていた者が侵攻予定のエンハイムに居るとはな、やはり世界は俺の味方らしい」


 オギリスは不敵に笑うと侵攻の準備を早めるように軍部に伝令を飛ばすことにした。


「オギリス様、指示通り神の遺物を探し出し、お求めの者の情報を集めてきました。約束通りどうか妻と娘の開放を……」


「よかろう、確かあの者達はタケヒコ……マルズ預かりだったな、クックッ良かろう開放してやる。命拾いしたこと精々感謝するのだな」


「あっ、ありがとうございますオギリス様」


 感謝の言葉を告げた影の男は聞こえなくなる。


『愚かな男だ。本当に妻と娘が無事だと思っているとはな、まあ約束は違えていないか、命だけは助けてあるのだから』


 消えた影を嘲笑しつつ、ついに探しもともていた者の手がかりを掴み、自然と笑みがこぼれる。


『ふっふ、やっとだ。今度こそ俺の前で跪かせて屈服させて、犯してやる。自分が誰のものかをとことんわからせてやらないとな、待っていろ佳奈恵』


 ガイウスは想像しただけで男の象徴を昂ぶらせることに気付くと笑うと呼び鈴で部下を呼び寄せる。


「おい、女を持って来い。確かレーグランドから逃げてきた王女がいただろう」


「はっ、しかし、宜しいのですか? 亡命してきたとはいえ相手は一応王族ですが」


「誰に物を言っているんだ、今さらレーグランドなど取るに足りん、交渉する意味もない。なら、あんな女など他に使い道があるか?」


「いえ、仰られるとおりです。すぐにお呼びしますのでお待ち下さい」


「ああ、いつものように飽きたらお前達にも払い下げてやるから喜べ」


「はい、ありがとうございます!」


 召使いの男は喜んでレーグランドの元王女を呼びに行った。



 数日後、カラドギア皇帝からの勅命の元、帝国軍がエンハイムに向けて侵攻を開始した。

 

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裏切り者には制裁を 〜僕を裏切った者は誰であろうと許さない……えっ何か僕以上に周りが怒っているようで僕には今更止められません〜 コアラvsラッコ @beeline-3taro

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