作者の拘りを随所に感じる、ファンタジーと時代劇が融合した冒険活劇。

【簡単なあらすじ】
ジャンル:ハイファンタジー
二人のお供を連れていたはずのヒロインは、一人で追手と対峙する羽目になっていた。一体何があってこうなったのか? 全ては彼らに出会う前の経緯から始まっていく。彼女の旅の目的とは? 何故追われることになったのだろうか?

備考・このレビューでは主人公ではなくヒロインと記載しています。

【物語の始まりは】
ある少女が追手から逃げていた。連れていたはずの二人のお供が今は傍に居ない。一体どうしてこうなったのか? こうなった発端から語られていくようだ。ここに至るまで、一体何があったのだろうか。

【舞台や世界観、方向性】
天下泰平の世において、何故冒険者が産まれたのか。その理由が明かされるところから始まっていく。
用語・補足 (個人的に検索した言葉)
有象無象……(意味)世にたくさんある、くだらないもの。
しかつめらし・い【鹿爪】…… 堅苦しくまじめくさった感じ。
しゅっぽん【出奔】……行方をくらますこと。

【主人公と登場人物について】
ヒロインと後に一緒に旅をする二人の男性の三人組。群像劇。
名前や素性が明らかになるのは一章の六話。分かり辛い部分を解説。
ヒロイン:ミト……少年のフリをしている少女。(冒頭の方は少女、途中から少年と表記されている為、同一人物と分かり辛いが六話で明かされる)子供と言われると頭に血がのぼるようである。お供を二人連れ、冒険中。
侍……剣士ジュウベエ 
殴り術士……ハンゾウ
(あらすじにある、役職と六話で出てくる名前)

【物語について】
恐らく、1ページの最初の部分がプロローグとなる。この時点ではヒロインを少女と表記しており、続く部分には少年と切り替わっているが、少女が追われることとなった発端から始まっていくのではないかと思われる。少年のフリをしていたが、六話にて素性を明かすことになる。一方、侍視点からも物語は進んでいく。ヒロインは仲間探しをしようとしていることから、この侍が仲間になるのではないだろうか?

侍が飯屋で食事をしようとしていると、ある胡散臭い男から声をかけられる。彼との話の最中に飛び込んできたのが、ヒロインであった。この後、三人は追手から逃れたのちにそれぞれ名乗ることになる。どうやらそれぞれ事情がありそうなのだが?

【良い点(箇条書き)】
・表現の仕方、言葉の選び方に時代らしさを醸し出している。しかしながら会話部分(口調)は現代風なので分かりやすいと感じる。
・地の文の書き方に拘りを感じた。
・あらすじにある他種族が、物語にどんな風に関わって来るのか謎であったが、その部分が明かされると意外性を感じた。
・旅の雰囲気が出ており、旅情を感じる部分もある。
・それぞれの過去について謎の部分があり、興味深い。ヒロインの見た夢の謎も気になる。

【備考(補足)】19話まで拝読
【見どころ】
一章ではヒロインとお供の二人が一緒に旅をすることになった経緯が語られている。三人は元は見知らぬ他人であり、ある飯屋で初めて会うことになる。しかしその裏舞台では、一人はヒロインのことを知っており、もう一人は初対面である。それぞれに事情があり、後に一緒に旅をすることになるのだ。三人は一緒に旅をしてはいるものの、それぞれ目的が異なる。利害の一致の部分もあるという印象。

タイトルの”時代劇風”がどのように作品に織り込まれているのか。
これは作品自体にかなりこだわりを感じる。意図した演出なのだろうとは思うが、ナレーション風に感じる部分や、瓦版を読み上げるように感じる部分など。会話は分かりやすい現代文も交えてはいるが、表現や言葉選びに時代物である雰囲気を醸し出している。戦いのシーンなども時代劇を思い起こさせるような演出を感じた。随所に作者の拘りが詰まった作品である。
そこに異世界、幻想の住人を巧く取り入れた物語であると感じる。二章にて、それぞれの境遇や過去なども明かされていき、奥行きが出てくる。一回に全てが明かされていくわけではないので、謎の部分について早く知りたいなと感じさせる。三人の旅(冒険)はコミカルかつ軽快なやり取りで、明るい雰囲気で進んでいくが、それぞれの過去には暗い部分もありそうである。
果たしてヒロインはこの旅の目的を無事、果たすことができるのだろうか。
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? お奨めです。