猫なのにねこっぽくないたまちゃん

@tanabata777

たまちゃん、0歳

水の都ヴェネツィア、イタリアの北部にある猫には不向きなこの場所のカナル・グランデという運河に面したレンガ造りのアパートの屋根裏で、この秋、たまちゃんは生まれる予定です。


「(ぬ゛るんっ)」


「おぎゃあ」


おや、たまちゃんが生まれたようですね、様子を見に行ってみましょう。


「もぅ〜なんなのよぉ〜」


お母さんの体液に塗れてナメクジ同然のたまちゃんはいらいらしています。


「(じたばたじたばた)」


足(?)をトリモチにひっかかったゴキブリのように、必死に動かしながら何かを探しているようです。何をしているんでしょう。


「お腹すいたわね〜ほんともぉ〜」


なるほど、お腹が空いていたんですね。


「こういう時は口にあたった突起物を見境なく吸うべしって神様言ってたわね」


たまちゃんは神様とお友達のようです。


「(じたばたじたばた)」


たまちゃんのお口は、枯れ草をいっぱい押し込まれたように乾き切っています。


「(じたばたじたばた)」


おっ、お母さんを見つけたようです。


「キター!やっと見つけたわよ美味しい何かが出てくる突起物!」


たまちゃんおおよろこび、一心不乱に吸って吸って吸いまくります。吸いすぎてもうほっぺがあるのかないのか分からなくなってきたところで


「ぷはーっ、今日はこのくらいで勘弁しといてあげるわね」


威勢のいいたまちゃん、お腹がいっぱいなってだいまんぞくです。今のたまちゃんにお母さんはもう必要ありません、兄妹も例の突起物待ちの列に並んでいるそうなので、たまちゃんはふわふわのベッドに横になります。横柄な割には優しいですね。


「(ごろごろごろごろ)」


暇そうです。


「??」


おや、お母さんがたまちゃんの元へやってきました。


「(べるんっ)」


「!?!?!?!?!?!?」


びりびりと悸え上がるたまちゃん、お母さんにお腹を舐められたようです。しかしここはお母さん、グルーミングも兼ね、たまちゃんを上から下まで満遍なく、チュッパチャプスかの如く舐め回します。


「(べるべるべるべるべるべる…)」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…………!!!」


初めての体験にドン引きのたまちゃん、駄菓子屋に置いてある10円で買えるカラーガムくらいの大きさの頭を、様々な感情が10–100 m/sの速さで飛び回ります。


「ふぅ……ふぅ……」


ようやくお母さんのリッキングから解放されたたまちゃん、以外と気持ちよかったらしく、恍惚の表情を浮かべながら、ふいごのように息を吸ったり吐いたりしています。


「もう……寝ることにするわね。」


そのままふわふわなベッドの上で寝てしまいました。今日はたまちゃんもおつかれのようです、ではまた次の機会にお会いすることにしましょう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫なのにねこっぽくないたまちゃん @tanabata777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ