第42話 強い人
そんな訳で『ターヒル道場の格闘大会イン護衛団!』は幕を閉じた。
なんだか終わって観客が帰る時に。
大きな男が現れたそうよ。
顔を隠して大きな剣を持った男。
「しまったにゃー。
昼寝してたら時間をわすれちゃったにゃー。
もう終わってるのかにゃ。
どーしよー。
ニャーヒードに怒られるにゃー」
なんて言いながら帰っていったみたい。
何者なのかしら。
アタシ、ステュティラちゃんが準優勝。
優勝は護衛団のアザム団長。
まー順当な結果だわよね。
チョッピリ惜しい結末ではあるけれど、まー格闘だし。
アタシの得意は剣技なんだからして、こんなモンでしょう。
「なーにがこんなモンでしょうだよ。
あからさまに得意げじゃんか」
アレシュがブツクサ言う。
「アレシュ二回戦負けでしょ。
アタシに対等な口効ける立場だと思ってんの」
「この……えーいステュティラ様。
すいませんでした」
ふっふふふ、気分いいわね。
ターヒル道場での大会は順位決め。
道場でのエライ順がこれで決定される。
だから、現在のアタシは道場ではいっちばんエライ!
「おい、ステュティラ」
なによ、まだアタシを呼び捨てにするヤツがいんの。
と思ってキッと振り向いたら、父親じゃない。
アタシは愛想笑い。
「な、何かしら父さん?」
そう言えばアタシ試合でマトモにアザム団長と戦ってないぞ。
一発でノサれてお終い。
あの戦いで父親が許すかしら。
道場の奥で立っている父さんの元へビクビクしながら歩いてくアタシ。
「準優勝、おめでとう。
13歳でこの結果は凄い。
だけど調子に乗るなよ。
ステュティラは調子に乗りやすいのが欠点だ」
ううっ、誉め言葉かと思いきや。
結局、お説教になんのね。
アクマモードで怒ってるんじゃない分マシだけど。
あの後、テトラは徹底的にしごかれたみたい。
アタシが道場に帰ってくると倒れ伏したテトラが意識を失っていて。
未だに目を覚まさない。
「聴いてるのか、ステュティラ?」
もう、メンドくさいなー。
「はーい、聴いてまーす」
「それでどうだった?」
父親の声が少し明るくなる。
なんなのかしら。
あまり聞いた事の無い父親の声の響き。
なんだかドキドキしてるような声。
これってどう言えばいいんだろう。
自分の宝物を友人に見せて、どんな反応をしてくれるか。
楽しみなような、不安なような。
そんな響き。
「アザム団長は強かっただろう?」
父の目がアタシを真っすぐに見ていて、どう答えれば良いかなんて考える間もなくアタシの口は勝手に答えていたんだ。
「うん……強かった!
本当に、本当に強かったよ!」
くろねこ男爵の冒険 「その人は砂の国ペルーニャで猫侍に生まれ変わり、少女を助けて戦うのだっ!!」 くろねこ教授 @watari9999
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