第32話 ルシアンside 【完】
ようやくオリーブと気持ちが通じ合えた。嬉しい。彼女は訳ありで結婚出来ないと言っていたが、婚約者から逃げてきたのだろうか?犯罪者では無いと言っていたし、心配する必要は無いのかもしれない。
俺はオリーブの側にいるだけでいい。
あぁ、幸せだ。
それは突然の事だった。帽子を深く被った通行人がオリーブにぶつかった。すると、隣に居たオリーブが膝を突いたんだ。どうした?とよく見てみるとオリーブの腹から血がポタポタと落ちている。どういうことた??
「いい気味だわ!ルシアンは私と結婚するのよ!私のルシアンを取らないで、近寄らないで」
そう叫んだのはローザだった。ローザがオリーブを刺したのか。
早く、まず、早くポーションを。
間に合え。
逸る気持ちとは裏腹に動揺して上手く探せない。急いでマジックバッグを漁る。あぁ、クソッ、急げ。
ローザは俺がポーションを探していると、
「あんたなんか回復なんてさせない!」
とオリーブに向かって更にナイフを振り上げた。クソッなんて女だ。オリーブを殺す気だ。
アイツ。俺の大切なオリーブに怪我をさせるなんて。オリーブを見ると、何か深刻な顔をしている。彼女の手がふわっと光った。
そして迫ってきたローザのナイフを叩き落とした。
あぁ、良かった。
そう思ったのも束の間。オリーブの様子がおかしい。苦しみ始め両手を地面に手を突いたかと思うと血を吐き出した。毒なのか?
ローザはオリーブの姿を見て狂ったように笑っている。
単に刺されただけではポーションやヒールで治るはずだ。
このままでは死んでしまう。するとオリーブから【解呪】の小さな声が聞こえてきた。
オリーブの手が光って傷口が塞がった。もしかしてヒールや解呪を使う事が出来る??
動けるようになったオリーブはローザを気絶させる。ローザが騒いでいたため、人々が集まり始めている。
「ルシアン。ごめん。私、ルシアンの側にもう少し居たかった。さよなら。」
そう言い残し、彼女は俺の元から去ってしまった。
その場に残された俺とローザは痴話喧嘩として処理された。オリーブの血の跡も、俺が怪我をし、俺の手にしていたポーションで回復した事になった。
その後、ローザはというと、結局母親と共に娼館行きとなった。
俺を刺した事になっていて自警団詰所で罪に問われたのだが、殺人未遂で刑を執行させる前に色々な所で借金を重ねていたため、借金取りが申し立てをしたようだ。
娼館で借金を返済してから牢獄行きとなるらしい。ローザの見た目は良いから多く客も付いているらしいので借金はすぐに返せるだろう。母親も下女として真面目に働いているらしい。
それからの俺は、居なくなったオリーブを探す日々。
ヒールや解呪が使えるオリーブはきっと聖女なのだろう。国から奴隷のような扱いを嫌い、逃げていたのか。それとも、権力を嫌い出てきたのか。
ローブを深く被り、人目を避けていたのか。俺に迷惑が掛かると知っていて俺と結婚出来ないと言ったのか。
全ては謎だ。
だが、オリーブは今、怯えているに違いない。俺が側に居ないと。ずっと彼女は一人きりだった。辛い思いを一人で抱え込んでいるはずだ。
オリーブが居なくなってすぐに周辺の街を探したが見つからない。森に入ったのかもしれないと思い、森を歩き回る日々が続いている。
見つからない。
だが、諦める訳にはいかないんだ。
3年もの月日が流れた。
いつものように狩りをしながらオリーブを探して森を歩く。ふと、森に呼ばれたような気がした。俺は呼ばれた方向へ歩いて行く。何日も。
数日も森の中を歩き回り、深い森の奥にたどり着いた。森の奥に居るはずのない人間らしき影が見えた。よく見ると、黒髪の人間が狩りをしている。
「こんな森の奥深くに人が住んでいるのか?」
気がつくと口に出していた。俺の口にした言葉が聞こえたようで黒髪の人間が手を止め、振り向いた。
「・・・ルシアン?」
心臓が跳ねる。高まる期待に呼応して心臓がドクドクと強く脈打ち始める。
「!?。俺の名前を知っている?もしかして、君は俺の探している恋人かい?」
俺は緊張しながら問いかけた。
黒髪の人は髪色をオレンジに変え、髪を結い俺に涙と笑顔を見せた。
「オリーブ。ようやく見つけた。」
もう絶対離さない。何があろうとも。
【完】
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ここまでお付き合い頂き有難う御座います!
読んで頂いた方、お気に入りに登録して頂いた方。皆様、本当に有難うございました。
召喚されましたが、失敗だったようです。恋愛も縁遠く、一人で生きて行こうと思います。 まるねこ @yukiseri
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