【書籍販売記念SS】アリサさんのことならお見通し
冒険者の俺にとって定休日はないが、休日はもちろんある。
アリサさんがギルドに出勤していない日だ。
「久しぶりだな。丸々一日っていうのも」
フィナという弟子ができてからクエストを受けない日も彼女のトレーニングに付き添っている。
だけど、彼女もまだ体が出来上がっていないので無理はさせられない。
よって、こうして完全休日を設けることにしていた。
「うん、今日も平和でいいな」
アリサさん目当てとはいえ、冒険者として活動している身としては嬉しい限りだ。
こうやって歩く人々の笑顔が見れると自然と笑みもこぼれるものだ。
「さて、今日のお昼ご飯は新店チェックも兼ねて……と」
本日のトレーニングも終えた俺は外に出るなり、ブラブラといい匂いにつられるがまま歩いていた。
すると、ばったり正面から歩いてきた最愛の人と遭遇した。
「「あっ」」
そして、ものすごい速さで目をそらされた。
え? ひどくない?
悲しいので彼女が顔をそむけた方へ回り込む。
「偶然ですね、アリサさん! まさかこんなところで会えるなんて!」
「……変態なのは重々承知でしたが、休日まで干渉してくるとは思いませんでした……」
キッと鋭い視線を向けられる。
身から出た錆か。しかし、俺もプライベートにまで踏み込んだりしないので、慌てて否定する。
「いやいやいや! 違います! 今回は全くの偶然ですから!」
「信用できませんね。あなたの普段の行いを思い出してみてください」
言われて、考え込む。
えっと……俺のスケジュールは……。
「アリサさんに挨拶。告白して、フラれて、クエスト終わりにもう一度プロポーズしてフラれて、ご飯誘って、退勤を出待ち……。ふっ、アリサさんへの愛で満ち溢れていますね」
「レイジさん。ひとかけらも届いていない愛は迷惑って知っていますか?」
「ははっ、またまた~。アリサ・マイスターの俺にはわかります。アリサさんは内心で喜んでいるのを」
その証拠にこうやって俺との会話に付き合ってくれている。
なんだかんだアリサさんは優しいのだ。
こうやって警備隊を呼び、牢屋にぶち込まれていないのが証拠。
「なんですか、その過去いちばん意味のなさそうな称号は」
「ありますよ! 俺の愛を証明する称号です!」
「ほう……」
あっ、なんか好戦的な目をしてる。
やだ……アリサさんのそんな表情も素敵……!
普段見慣れない挑発的な瞳に感激していると、アリサさんは髪をなびかせた。
「では、自称アリサ・マイスターのあなたに質問しましょう。今の私はどんな気持ちであなたと接しているでしょうか?」
「そんなのもちろん――」
ほんのわずかな逡巡。
そもそもアリサさんがこの辺りをうろついている理由はすでに見当がついていた。
これはアリサさんの性格を知っているからわかる情報だけど。
あとは状況から導き出せる。
お気に入りの白の私服じゃなく、汚れが目立たない黒色のコーデなのが何より決定づけている。
「早く新しくできた店にご飯を食べに行きたい、ですよね?」
そう告げると、アリサさんは驚いた風に目を見開く。
刹那、気恥ずかしそうに目をそらした。
「一緒に行きましょう。俺もちょうどお腹空いてたんです」
「…………」
「当てたご褒美に、いいですよね?」
「……ついてくるなら勝手にしてください」
どうやら正解みたいだ。
アリサさんのことがまた一つわかったようで、すごくうれしい。
緩む頬を繕いもせず、歩き出した彼女の隣に並ぶ。
「今回はたまたま正解したから許可するだけで、決してあなたの好意を受け入れたわけではありませんから勘違いしないように」
「そういうことにしておきますね!」
「……ニヤニヤするんじゃありません」
こうして、俺たちはいつものように軽口をたたき合いながら店の列へと並ぶ。
そして、とても有意義で、しばらくは思い返すであろう楽しい時間を過ごすのであった。
◇お久しぶりです!そして報告できてなくてすみません!
本作なんと明日から書籍としてファンタジア文庫様から発売されます👏👏👏
タイトルは『ギルド最強VSクールな受付嬢~あなたを攻略できるクエストはありますか?~』です!(イラストはそらしま先生【@sorashima_117】→Twitterにアリサさんの激レアでれでれイラスト投稿してくださってるので見て!)
自分のTwitterからも可愛いアリサさんと格好いいレイジくんの表紙見れます!
各通販サイトおよび書店で展開されますので、ぜひお手に取っていただけると嬉しいです!
宜しくお願い致します~!!
あなたを攻略できるクエストはありますか? 木の芽 @kinome_mogumogu
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