ゾワゾワくる大ピンチのはずなのに、でも笑えてしまうことの説得力!

 家にどう見てもヤバい幽霊が出たのと同時に、生まれて初めてゴキブリに遭遇してしまった人のお話。

 背筋の凍るようなホラー描写が冴え渡る、見事なコメディ作品です。
 いや、コメディというのは言い過ぎな面もあるにせよ(少なくともおふざけやギャグの類ではない)、でも最凶ホラー同士が衝突してしまった結果の不幸な事故みたいな、この発想がもう本当に面白くて最高でした。こんなのずるい……!

 状況そのものは大真面目にホラーしてるのに、というかしていればこそどっちに集中すればいいやらわからないというか、謎の「もったいない感」にどうしても笑わされてしまいます。
 いや本当なんで同時に来ちゃったのお前ら!? 描写自体はあくまでガチで、本当にゾワゾワくる怖さがあるのがなおすごい。

 紹介文の通り、その序盤を抜けて以降、お話そのものがガラリと様変わりするのですけれど、後半も楽しくて素敵でした。こちらは本当にコメディ調というか、登場人物同士の軽妙な掛け合いが楽しい感じ。
 うっすら予測できる(というか先に答えを言っている)部分があり、それが逆に物語の先を気にさせる要素になっていたりして、するする読まされてしまう楽しさのある作品でした。いろいろ巧み。すごい!