少女の平和な日常と、そこにふわふわ浮かぶ不思議な何か

 ほのぼのとした牧歌的な日常を送る少女と、そのそばに漂う謎のふわふわの物語。

 少女の一人称体で書かれたホラー作品です。
 といっても、別に彼女が恐ろしい目に遭うでもなく、もちろんスプラッタな場面があるわけでもなく、本当になんの変哲もない平和な日常を送っているお話。

 ただし、少なくとも彼女の主観的な認識に限れば、という、そこが鋭く胸に突き刺さってくるかのような鮮烈な作品でした。

 この先はネタバレを含むので、未読の方はご注意ください。



〈  以下ネタバレ注意!  〉

 ふわふわが好きです。こいつが結局なんなのかわからないところが好き。
 ホラーの要たる怪異の正体は、そもそも完全には明かされないのが普通ではありますが、でもこのふわふわはそれ以上になんだかわからないところがあって、その不気味さが本当に印象に残ります。

 こんなあからさまな「何か」、どうしたって注意を惹かれてしまうのに、結局なんなのかわからない——どころか、下手すればこいつは何もしておらず、本当にただ「いるだけ」かもしれない、と思わせられるところが大好き。
 ふわふわはただの結果表示みたいなもので、あくまで原因は主人公地震にあるかのような。

 物語全体のほのぼのした雰囲気との落差と、意識の誘導の仕方の巧みさの光る、ゾッとするような不気味なホラーでした。

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