そして、世界は
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──そして、世界は
1991年。“社会主義連合国”の共産党一党独裁体制が終わり、“社会主義連合国”はただの“連合国”となった。
冷戦はついに終結したのである。
オーガスト・アントネスクは冷戦の終わりを見届けてから、この世を去った。彼は最終的に2つの政党と6人の大統領に仕えた。
フェリクスはあの事件の後で奇跡的に助かり、そして彼は宣言通りに麻薬取締局の辞めた。西部に家を買い、そこで第二の人生を歩むことにした。
ヴォルフゲート事件は結局、真相の分からないままに終わった。大統領がどこまで関わっていたのか、戦略諜報省が関与していたのか、オーガスト・アントネスクの立場はどのようなものだったのか、何もかも分からなかった。
エッカルト・エルザーは死後に議会名誉勲章を授けられた。フェリクスにはその手の話がなかったことが、彼の政治への影響力を物語っていた。
そして、2005年。
2001年に起きた宗教原理主義者による“本土攻撃”に続く、対テロ戦争が続く中、60歳の誕生日を目前としたフェリクスはいつものように庭の手入れをしてから、愛車を磨いていた。最近では“国民連合”製の自動車より“連合帝国”製の車がもてはやされるが、フェリクスは国産車にこだわっていた。
「フェリクス・ファウストさん?」
不意にそう呼びかけられて、フェリクスが振り返る。
「アロイス・フォン・ネテスハイムとチェーリオ・カルタビアーノからの挨拶だ」
2名の男が銃身を切り詰めた魔導式散弾銃を持っていることに気づいた時には手遅れだった。2発の銃声が響き、フェリクスが地面に倒れる。
「親父があんたによろしくだとさ」
そして、もう1発銃声が響く。
「やったな、兄弟」
「ああ。俺たちはクソフェリクス・ファウストの野郎をぶっ殺した。最高にクールだ。俺たちは親父たちの恨みを晴らしてやった」
俺の名はオリヴァー。
オリヴァー・オルフ。
だが、俺はこう名乗っている。
オリヴァー・フォン・ネテスハイムと。
俺の親父は保険会社の役員なんかじゃないことを俺は知っている。俺の本当の親父は世界最大のドラッグカルテルと呼ばれたヴォルフ・カルテルのボス。アロイス・フォン・ネテスハイムだ。
俺には遺産を受け取る権利がある。親父の残した伝説を俺たちは分けてもらうんだ。
隣にいるのはダチのリナルド・カルタビアーノ。あの伝説のチェーリオ・カルタビアーノの息子だ。こいつの親父さんは死ぬまで刑務所から出れない。だが、俺たちは親父たちの伝説を受け取りながら、新しい伝説を作る。
「行こうぜ、“連邦”へ。そして、俺たちがまた新しい伝説を作るんだ」
「イヤアッ! 最高にクールだ!」
俺たちはもうカルテルを作り始めている。
ギャングたちは俺たちに従っている。フリーダム・シティではリナルドの部下たちが『オセロメー』っていうギャングと手を結んだ。他にもいろんなギャングとつるんでいる。俺たちはその頂点に立っている。
そして、“連邦”では最高にホットな新世代ヴォルフ・カルテルが待っている。
これから俺たちは親父たちのように伝説を作るのさ!
“連邦”では今なおドラッグビジネスが行われている。
オリヴァー・フォン・ネテスハイム率いる新世代ヴォルフ・カルテルによる連邦での大規模なドラッグビジネスの始まりに伴う、2005年から始まる第二次ドラッグ戦争では死者が15万人を超えた。
戦争はまだ終わっていない。
戦争は決して終わらない。
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二度目の人生の生存戦略! ~平穏な暮らしを殺してでもうばいとる~ 第616特別情報大隊 @616SiB
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