魔法と呼ぶにふさわしい人の技

 それぞれ職場も職種も違えど、「街を綺麗にする清掃業」という点は共通している男ふたりの、仕事の様子を描いた物語。

 魔法のような能力をテーマにした現代ファンタジーです。短く歯切れの良いショートショート的なお話でありながら、しっかりした芯のあるところがとても魅力的。

 壁の落書き(グラフィティアート等)を落とす清掃業。よく考えたらスプレーの塗料って、ただゴシゴシやっただけじゃ落ちないよね、という、そんな当たり前のことをいかに普段意識せずに生きてきたか自覚させられました。
 わかりやすく何かを創るのとは違い、街を「問題のないよう普段通りに保つ」お仕事の、いかに目立ちにくく見落とされがちなことか。

 そんな地味なお仕事の様子が、でも確かに魔法であると感じさせてくれる、その描写が本当に魅力的です。
 超常能力ではなく専門技能、人の為す技こそ「異能」であること。普段は滅多に意識しないところで、その魔法が生活を支えてくれているのだと、この先輩の一例でそう感じさせてくれるところが好きです。

 実は物語の構造としては後半が肝なのですけれど、でも主題や語られる内容の楽しみは前半にこそある、一粒で二度美味しいお話でした。
 主人公と先輩の、その対照的なあり方自体が物事を語ってくれるところも素敵。