固い信頼に裏打ちされた友情の心地よさ!

 この世ならざる怪異を知覚し、さらには引き寄せてしまう特性を持った高校生の少年ふたりが、そのおかげで本格的な危機に巻き込まれる物語。

 不思議な力を持った少年が主人公の、いわゆる現代ファンタジー作品……ではあるのですけれど、その上でしっかり「普通の少年の冒険」を描いているところが、なにより気持ちの良い作品です。

 彼らの力は世に言う「霊感」、ただ霊や妖怪が見えるといった程度のもので、決して常人を大きく超越するものではない(厳密にはなくもないにしても、どうあれ実質的には)、というのが大きな特色。
 彼らの主人公としての魅力はその得意な能力にあるのではなく、言動や覚悟にこそあるというのがビリビリ伝わってくるのが最高でした。

 つまりは友情の物語というか、主人公が親友の匠くんのことを好きすぎるところがもう大好き。
 とにかく彼のことをよく見ていて、ことあるごとにその美点を褒めまくるのに、でも全然ねっとりしないところ。それは主人公の人柄でもあり、またその友情が相手への信頼によって裏打ちされていることの証左とも読めて、もうとにかくひたすらに心地がいい!
 こういうふたりの関係性は、もう無限に読んでいたくなる魅力があります。

 終盤のクライマックス、危機に立ち向かう展開も素敵。
 苦難に勇気をもって立ち向かう、まさに少年の冒険譚と呼ぶにふさわしい作品でした。