一滴 奏または空は、精霊空間で、一滴 零に、天空剣を授けられ、その後十年間の間精神空間で、波動ベクトル操作による、質量操作、力撥、力飛を会得する為特訓する。

 零は、言った。


 「来い。何でもいい、最大出力の攻撃をしてこい。」


 私は、身体強化纏をし、波動拳 破の出来損ないをした。


 「なっ。」


 攻撃が逸らされた。


 攻撃の軌道が変えられた。


 「今のが、力の操作だ。今、御前の打ってきた、波動拳の力の方向ベクトル、加速度の更なる微分、躍度、躍度のさらなる微分、加加加速度、無限に繰り返される微分、曲率、捩率の変化の軌跡を読んで、波動ベクトル操作により、動きを逸らした。」


 波動ベクトル操作。


 「一度では、わからんだろう。身体に覚えさせろ。波動ベクトル操作を。」


 波動ベクトル操作には、二つの型がある。


 力の軌道を逸らし、攻撃を撥ねる技、力撥と、


 力の軌道を操作し、対象物を特定の方向に動かす、力飛だ。


 「纏は、私が、産まれる前からあったとされている。私の五世代先祖の鳥人のものが、魔大陸の獅子族から、学び会得したのが、鳥族に伝わる纏のはじまりであり、今鳥人の間で、使われている纏は、わたしが、完成させた、流派の纏だ。纏を忘れぬよう、書物にして記録し、先祖代々、受け継ぐように、してきた。」


 そう言えば、レベッカが、昔、世界には五つの大陸があるだとかと、言っていたなあと、思い出した。かつて鳥族は、地上に住んでいたのであろうか。


 「鳥族が何時、天界に住み着いたのかは、分からない。只、天界と地上を行き来する手段がある事は事実だ。例えばバーミアン遺跡で御前が乗って来た円盤の様に、古代の文明によりM移動する事は可能であった。私は、かつて、円盤により、地上へ降り、旅をした事がある。世界中を回った。」


 一滴 零は懐かしそうに、遠くを見た。


 「私には、時間が残されてはいない。奴の黒い焔は、私の存在を焼き尽くさんとしている。」


 其の後、みっちりと、特訓してもらった。


 「此れを使え。天空剣だ。」


 零は、天空剣という、剣を私に向かって投げた。


 私は其れを受け取る。


 「おっ重い。」


 何て、重さだ。 


 「そいつは、力の操作の第三 質量操作が出来なければ、振るう事も出来ない代物さ。」


 質量操作とは、触れた物質の質量を操作する魔導である。


 「質量操作、力撥、力飛。この三つをマスターすれば、天空剣の威力と、凄まじさが分かる。身てな。」


 一滴 零は、背中に掛けてある、天空剣を持つと、手に取り、剣を振った。


 「なっ。」


 思わず、声が漏れる。


 天空剣は、空間を切り裂いた。


 「此れが、天空剣だ。空間と次元を切り裂いてしまう程の威力。扱うには、少なくとも一〇年以上の鍛錬が必要になる。」


 「しかし、一〇年も、時間は残されていないではないか。」


 どうするのだろうか。


 此れで、暗黒闇に勝てるのであろうか。


 「暗黒闇には、今の状態では、未だ勝てないよ。だから、君の精霊を使って、精神空間で、修行するしかない。今も、精神空間の中にいる、精神空間での一年は、向こうでの、0・1秒だ。つまり十年で一秒になる。」


 30センチ程の小さな精霊の具現化した姿のものが、言った。


 「ただし、リスクはあるよ。精神空間で時間を過ごすという事は、向こうの世界でも同じように時間が経つという事、詰まり此処で十年過ごせば、君は、十年の寿命を失う事になる。」


 向こうの世界の一秒で、十年の時を過ごした事になるのだ。


 「それと、精神空間で長くすごせば、認識を変化させ、一秒が無限の長さに認知されるようになる、其れは、途方もない、無限の時間を経験し続けるという事だ。精神が分裂し、死ぬものも多い。健闘を祈る。」


 あれから、十年、私は、天空剣を使える迄、ずっと特訓を続けて来た。


 あの後、直ぐに、一滴 零は、燃え尽きて、消えて終った。


 ずっと一人で、気が狂いそうな時間を過ごした。


 精神空間での演算は、脳に負担が掛かる。通常の世界の315576000倍の速度で進む世界を演算し、別の世界を脳内再現しているのだ。脳内再現の中で、魔法を演算し、現象を再現しているのだ。


 精神空間は、肉体と魂を離れた精霊の世界の事だ。 


 だのに、どうして、経験した事のない事や、現象、物理作用を再現できるのか。


 精霊の成しえる技だ。


 神経系を精霊の作用により、加速化させる、死の間際にみる走馬灯を更に加速させているようなものだ。つまり、其れだけ脳に負担が掛かる、故に、寿命が縮むのだ。たった一秒で十年の寿命が縮む。


 精霊の作用。


 精神は、脳と、身体中の神経に宿る。


 精神空間には、他者の干渉は殆ど不可能だ。


 精霊が、精神世界で、神の祝福を与え、物質に精神を与えている。


 脳のスペックでは、不可能な世界のあらゆる物理法則の演算さえ、精神空間に於いては、容易に演算可能としてしまう。


 あらゆる情報処理の拡張子のようなものだ。


 だが、神の祝福は、生まれてから、死ぬまで変わらない一定だ。増える事はなく減る一方だ。


 神の祝福が無くなれば、死ぬだけだ。


 つまり、精神空間での、走馬灯的時間の使用には、精霊の力が必要で、精霊の量は、生まれつき、決まっている、精霊の力が無くなった者は死ぬという事だ。


今回の修行で、私は、精霊の凡そ九割を失った。


 世界には、精霊が、無制限に使えるものもいるらしい。


 精霊が無制限に使えるという事、神に愛されし、存在。


 特別な使命をおって生まれたものだけが、使えるという精霊魔法。


 この世界に神など存在しない。


 しかし、分からない。


 誰が、精霊と精神のシステムをこの世界に作り出したのか。


 と言う事だ。


 何を基準に、精霊の加護の量が決まっているのかと言う事だ。




 「天空剣 空間斬り。」


 シュパ嗚呼あああああん。


 空間が天空剣の斬撃により、切り裂かれた。


 「へええ、やるじゃん。お見事。」


 30センチ程の小さな精霊が、手を叩いて、言った。


 「体感的に、十年、よく会得したね。」


 偉いモノだ。と、精霊は言った。


 「御前、名前はあるのか。」


 「精霊に名前なんて必要ない。ないよ。」


 精霊は、何処か寂し気に言った。


 「楓森。私が名前をやるよ。」


 精霊は、驚いた様子であった、がやがて言った。


 「御前になど、付けてほしくないわい、じゃが、まあ、悪くはない名じゃな。」


楓森は、照れくさそうに、前髪を弄っていた。


楓森がいなければ、精神空間での訓練は出来なかった。


精霊の九割を使ってしまった。


精霊が無くなった時は、楓森は死に、私も死ぬのだ。


運命共同体だ。


「あの戦いで、お主が、勝てる見込みはなかった。精神空間を使わざる終えんかったのじゃろう。私と御前は運命共同体じゃ。」


私は、死んではならない。


私には、精霊がいる。


精霊は、私が死ねば何処へいくのだろうか。


「仮に、私が死ぬと、御前は何処へいくのだ。」


「精霊は、御前が死んでも死なぬ。別の人間の祝福に回させるだけじゃ。かつて、一滴 零の精霊をしていたのは、私だ。」


 精霊は、加護を与えている対象が死んでも死ぬことは無いけれど、精霊が無くなってしまうと、対象は死んで終うのだ。


 死とは、何なのだろうか。


 記憶を失う事だろうか。


 肉体が動かなくなる事だろうか


 魂が、無くなる事だろうか。


 存在が消える事であろうか。


 生命にとっての死は、生命活動の停止か。


 「あらゆる、物質には、精霊の加護が少なからず、付いているが、精霊の存在に気が付き、遭遇できるものは、本の僅かだ。命尽きるその寸前に、初めて、精神空間に入る事がある。精神空間の発動条件は、死の寸前だ。」


 精神空間は、死ぬ寸前に、訪れる、無限にも近い時間の事だ。


 「精神空間は意図して、来れる場所ではない。死ぬはずの運命の前に、抗う事でしか、来れない空間だ、運命が覆せるといいな。」


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十二種族伝説。キャラクター達は別の世界から異能やら魔法やら高度な科学技術のあるワンダーランドへやって来て旅をして、味方に出会い、魔物、怪物を倒し、世界の秘密真相に迫り、ボスを倒します。 無常アイ情 @sora671

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