一滴 奏または空は、地下闘技場で、暗黒 心と再戦するが、呆気なく、黒獄炎纏 死国の死の黒焔に焼かれる、死ぬ瞬間亜空間に飛ばされ、精霊に会い、一滴 零が最後の稽古を付けに来た。

他愛のない会話をしつつ、七峰 薫、出雲 雪永、東方 向日葵、八咫烏 守、と私は、歩いていた。


 ずっと歩いていると、やがて、扉が見えた。


 「扉の中が、地下闘技場だ。暗黒闇はもう時期に、地下へやって来る。」


 八咫烏 守は、闘技場の固く閉ざされた扉の鍵を回し開けた。


 中に入る。


 広い場所だ。


 高さ1000m、縦横一キロは或る。


 「壮大な場所だ。」


  私は、辺りを見渡しながら言った。


 「そうだろう、そうだろう。我らが、一年と半月、休まず、開発を続けて来た、場所だからねえ。」


 八咫烏 守は、誇らしげに答えた。


 壁一面と天井、床は、ドラマカライト鉱石で、加工されていた。


 新鮮な空気が入って来るように、空気穴が小さな空気穴が空いている。天井からは、地上の空気がパイプを通って、送り流される。


 空気清浄機械と、電気の配線が、壁と壁の間に、張り巡らされている。


 「儂達は、もう、行かねばならぬ。民衆が待って居る。お主は、此処で、奴が来るのを待て、必ず奴は、此処へ来る。民衆は、第三拠点の隠れ家に、避難を初めておる、儂達は、直ぐにでも、民衆の警護に付かなくてはならん。絶対に勝つんだぞ。」


 八咫烏 守は、真剣な眼差しで、私を見つめる。


 七峰 薫、出雲 雪永、東方 向日葵にしても、同様の表情をしている。


 期待が込められているのだ。


 私の勝負に命運がかかっているのである。


 焦ったって仕様がない、気を静めて、冷静になれ。


 「必ず、勝つ。」


 私は、拳を強く握ってみせた。




 地下闘技場で、待った。


 待っている間。


 気を蓄え、念を練る、集中をしていた。


 祈り、イメージトレーニングをした。


 精神を集中させ、鋭気を養うのだ。




 二時間程した時の事である。


 暗黒心は、地下闘技場へやって来た。


 「ほう。生きておったか、何時ぞの鳥族の戦士長。」


 右を開けて、奴の動きを見た。


 「警戒しなさんな。にしても、纏の精度が格段に上がってようだな。一年と半年の間に随分と、強くなったのだな。末恐ろしいよ。」


 手の平を横に開き、首を傾げて見せた。


 「また、タイマンかい。何度やったて同じだよ。君じゃあ、ぼくには勝てない。届かない。仲間は、何処に避難したんだねえ、全く、騙されたよ。扉の中で、身を潜めているものばかりと考えて居た。まさか、君が生きていたなんてねえ。何時でも相手をしてやるよ。掛かってきな。」


 挑発だ。


 もう、駆け引きは、始まっているのだ。


 身体強化纏をする。


 「波動拳 纏。」


 ボワーン、ボワーン、ボワーン。


 拳に波動の渦が渦巻く。纏だ。


 「閃脚 空間移動。」


 一瞬で、空間を移動し、暗黒心の目の前に移動する。


 「波動拳 破。」


 右手で、思いっきり、殴る。


 しかし


 「なんだ。ビビらせるなよ。破が、使えるのだと、思って、少し焦ったじゃあねえか。所詮は未だ、お粗末な波動拳だな。指一本で止められる。」


 暗黒心は、私の波動拳を、右手で、握っていた。


 「この手を折れちゃうよ。」


 私は、咄嗟に、防御術 柔軟を使った。


 発散纏から、独自に編み出した、防御術だ。


 ぐにゃりと、腕が、暗黒心に握られた拳から抜けていく。


 「ほう。発散纏は習得したのか。其れに、空間移動も可能なのだな。しかし、其程度では、儂には到底敵うまい。」


 暗黒心は、呆れたように、失望したように、私を見た。


 「御前じゃ、無理だ。所詮、鳥族の戦士の末裔、本物には成れなかったのだ。この我が手で、葬ってやるのが、せめてもの、礼儀だ。」


 暗黒心の全身から、黒い焔の纏が見える。


 見た事のない纏だ。


 「黒獄炎纏 死国。」


 なっ。


 身体が、引き寄せられる。


 暗黒心から、強力な引力を感じるのだ。


 「全てを焼き尽くす、死の黒い焔を味わえ。」


 暗黒心は、私をゼロ距離で、殴った。


 拳には、死の黒焔の纏がされて居る。


 「あああああああああああああああああああああああああ。ああああああああああああああ。」


 咄嗟に右手で、防御したが、腕が、消えた。


 肩のあたりで、未だ、黒い焔が、消える事なく、燃えている。


 「ホロロロロロロロロ。死の焔は、てめえが死ぬまで消えない、死んでからもずっと痛みを与え続け、魂が燃え尽き、生々流転さえ、出来ぬ儘、後世の子孫、家族、同族迄焼き尽くすとされている。」


 ああああああああああああああああああああああああ。痛いなんてものでは無い。


 泣き叫ぶ事しか出来ない。


 身体が、黒い焔に蝕まれていく。


 灰さえ残さない、燃えた一部は、文字通り、この世界から、消えたのだ。


 「どうすれば、いいのだ。」


 死が脳をよぎった。


 レベッカの事が頭をよぎった。


 東方 向日葵、八咫烏 守、七峰 薫、出雲 雪永、が待っている、勝つ事を信じて、待っている、此の儘死んではならない。


 死んではならない。


 勝つと、誓った。だから。




 「君は、どうして、未だ立ち上がれるんだい。」


 何処かから、声がきこえる。


 幻聴でもきこえているのか。


 頭がおかしくなってしまったのかも知れない。


 「君は、どうして、諦めないんだい。」


 まただ、誰なんだ。


 つぎは、映像迄、見える。


 鳥が飛んでいる。


 小さな鳥族のものだ。


 身長30センチ程の小さな鳥族だ。


 足元くらいの大きさしかない。


 「僕は、君に宿る、精霊さ。」


 精霊、ついに脳が、バグったらしい、精霊、お伽話じゃ、あるまいし、やってられないね。


 「精霊と言うのは、あのお伽話に出てくるものとは、少し違うよ。あらゆる物質は、肉体、精神又は、魂、そして、精霊を持つ。」


 精霊とは何なの


 「いわば、運の事さ。あらゆるものは、精霊の加護を受けている。世界からの祝福とでも呼べばいいだろうか。つまり、私は、御前の精霊が具現化した姿というわけだ。御前が死にそうであったから、こうして、わざわざ目の前に現れたというわけじゃ。」


 ふむ。よく分からぬ。


 「御前の先祖の、一滴 零が、御前に話があるそうだ。」


 其処には、黒い焔に燃える、一滴 零の姿があった。


 「よう、夢の中で、あって以来だな。」


 零は、笑っていた。


 「分かっている。御前の家族、子孫、に、黒い焔の影響は及ばない、只、私はもう、消える。世界システムに消される。だから、御前に、最後の稽古を付けに来た。力の軌道を見、使う稽古をね。」


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