一滴 奏は夢から醒める、名前の吉凶は良くなかったが、自分の名前を大切にしようと思う、天界で、暗黒心に殺された鳥族の仲間の墓に、線香を上げ祈る、地底闘技場が完成したらしい。

「変な夢でも見ていたような気がする。」


 朝、起きると、翼が完全に、再生していた。


 笹原 翔。あの夢は、何だったのだろうか。


 一滴 零。




 名前は、大切だ。


 吉凶は、名前によって決まる。


 意味も大事だが、画数は、より重要な、運命を司る要素になる。


 陰陽と画数だ。


 天格 人格 地格 外格 総格だ。


 1、3、5、6、11、13、15、16、21、23、24、25、29、31、32、33、37、39、41・・・。


 大吉とされて居る画数がある。


 考慮するべき事だ。


 一滴 奏は、天格 大吉 人格 凶 地格 凶 総格 大吉 外格 凶 陰陽 凶なので、名前の吉凶的には、よろしくない。


 天格と、総格だけ 15画と24画で、運勢がいい。


 人格 23 地格 9 外格 10で、五行・三才配置は、土→火→水で、最悪だ。


 だから、何だ。


 と石ころを蹴った。


 例え、名前の吉凶が悪かったとしても、実力と運が、あれば、誰だって、成功し、人生を素晴らしく過ごしていける。


 私は、自分の名前を何だとも思っていないのだ。


 空という文字は、画数 8画なので、吉だ。吉は、普通にいいだ。凄くよくはない。 


 だから、なんだ。


 名前は大事だが、全てが名前で決まるわけではない。




 事実、有名人だとか、過去の偉人の名前を、占っても、凶だらけの場合もよくある事だ。


 しかし、結局そういう事だと、思う時もある。


 世間的に成功を収める事だけが、幸せでは無い、大吉とは限らない。


 友達の吉凶を占ってみたが、或る程度の育ちの良さと、心の豊かさ、幸せを享受しているものは、不思議な程に、名前が、吉凶的によろしいのである。


 もしかすると、親が、しっかり、考えた付けた名前には、やはり、名前の吉凶、陰陽を考えて、付けているために、結局、育ちがよくなり、家系は、成功するのかも知れなかった。




 そんな、事は、どうしようも無い事だ。


 生れて来た家に、文句を言っても始まらない。


 いやならば、名前を改名すればいいだけだけの事だ。




 私は、一滴 奏だ。


 変わらない事実だ。


 名前を変えようだなんて思わない。


 この名前で、私は生きている。


 記憶はない。


 だが、一滴 空だ。


 もしかすると、そうなのかも知れなかった。


 記憶が戻る迄は、レベッカに付けて貰った、この名前を大切にしよう。




 天界に来てから、一か月が過ぎたころ、最早、鳥族は、衰弱しきっていた。


 しかし、10月10日、奴等は、来た。


 暗黒心は、遂に、遺跡の中を攻めに来た。


 「もう、終わりさ。」


 鳥族の、住人達は、口々に絶望を口にした。


 「大丈夫さ。奏が、きっと、何とかしてくれる。暗黒心を倒してくれるさ。」


 雪永は、どんな時でも希望を失ってはいけないと、住民たちを励ました。


 「ありがとう。」


 私は、礼をした。


 「いいよ。御前、遂に、待って居られなくなったが、勝てる見込みはあるのか。」


 正直、勝てそうに無い。が、何としてでも勝つしかなかった。


 「勝つしか、ないのさ。特訓の成果を必ず発揮し、限界を越えるさ。」


 胸を手で叩いて見せた。


 雪永は、大きく頷いて、見せた。


 「きっと、御前だったら、やってくれる。」


 七峰 薫と、東方 向日葵が、私を励ましに来た。


 「君は、きっと、やる。信じている。」


 七峰は、強いまなざしで、私を見た。


 「やっちゃってください。奏さんは、最強です。絶対に負けません。」


 相変わらず、向日葵は、盲目に、私を崇拝している。


 「どうだ。墓にでも、寄って行かないか。暗黒心に殺された、鳥族たちに会いに。」


 雪永は、花を片手に、言った。 


 「わかった。行こう。」


 私は、勝負前に、墓参りに行く事になった。


 墓が並んでいる。


 「此れが、虹七 洋太の墓で、隣が、街道 珠樹の墓だ。」


 綺麗に研磨された石の墓だ。名前が刻まれている。


 虹村家の子孫、街道家の子孫の名前が刻まれている。


 水で手を清め洗った後、墓周りを掃除し、花瓶に水を入れ花を挿した、線香を立てると、合掌し、冥福を祈る。


 死後の世界が、あるのかどうかは、分からないが、礼儀、作法だ。


 あるかも知れないのならば、祈っておいて損はない。


 雪永が、出雲家の墓の前で、墓にお祈りをしていた。


 もう、出雲家は、雪永しかいないのである。


 暗黒闇によって、出雲家のものは、雪永を残して、全滅した。


 私は、責任を感じ、線香をあげる事にした。


 「私も、線香を上げさせてくれないか。」


 「ありがとう。上げてやってくれ。」


 私は、墓の前で一礼し、線香をあげ、合掌した。


 虹村家も、街道家も、もう、絶滅した。


 七峰家は、薫と、妹の美智子以外は、死んだ。


 東方家は、祖父母が死んだが、両親は生き残った。一人っ子である。


 結局、全ての墓に線香を立てていった。


 「おお、墓参りか。」


 八咫烏 守は感心した様子で、歩いて来た。


 「はい。」 


 「で、お主、覚悟はできたかえ、もう、地下の避難区域の一歩手前まで、暗黒心は攻め込んできておる。お主と、暗黒心を地下に隔離して、戦わせる。随分と前から計画しておった通り、地下闘技場は完成したわい。」


 地下闘技場。 


 遺跡から出土した、ドラカライト鉱石で、創られた、地下闘技場だ。


 「あの場所ならば、想い存分戦えるであろう。衝撃にも耐える、強固で、頑丈な、壁で囲まれておるからな。」


 八咫烏 守は、墓参りを終えると、話つつ、歩き出した。


 「はい。やれるだけやってみます。」


 「ああ、やって来い。」


 墓から、地底闘技場迄の、徒歩一時間程度の道を歩く。


 あたりは、電灯で照らされてはいるものの、薄暗い。

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