???、誰の記憶だろう、何時の記憶だろう、ずっと、昔に、全く別の世界で、体験した気がする、不可思議な夢だ、謎の白い空間の異空で笹原 翔に出会う。

何処迄も速く飛べる、鳥族は、最速の羽を持つ一族。」


 私は、生えかけの、翼を見て、誇らしく思った。


 「十二種族かあ、この戦いが、終わったら、世界中を回って、会ってみたいな、全ての種族に。」


 「そうだな。只、天界から、地上へ降りる術を儂らは、知らん。お主は、あ奴に落とされたが、下手をすれば死んでいただろう。」


 確かに、そうだ。


 「此れ迄、地中に降りた鳥人は、いないのでしょうか。」


 「分からん。もしかすると、いるのかも知れない。」




 幼い時の記憶を思い出す。


 本当は、こう成りたかった。


 というものが、存在する。 


 剣道だって、好きだった。


 水泳だって好きだった。


 勉強だって好きだった。


 何処かで挫折して、辞めた。


 絵を描く事だって、漫画を描く事だって、バンドを組んで音楽をしようと、いう事だった、そうだ。


 前世の私は、結局、何も成し遂げはしなかった。


 強くなりたいのでは、無かったのか。


 大人に成るにつれて、弱くなっていった。


 心と、精神は、確かに強くなったのかも知れない。


 色々な事を諦める事で、妥協する事で、強くなっていった。


 御金、仕事、生きて行く事。


 誰だって、何かを諦めて、此処まで来ている。


 やり直しなんて、無い。


 そう思っていた。


 私は、結果、人生に絶望し、18歳の時、自殺した。




 けれど、私は、死に切れてはいなかった。


 未練の残った死に方をした私は、やり直しをさせられる羽目になった。


 やり直し。


 誰しも、何かしらの役割を持っている。


 人間は、其れを成し遂げる迄、死ねないらしい。


 永遠と繰り返す。


 役割を果たす迄、一体、誰が、何の為に作った、法則なのかさえ、分からない。


 が、そうらしい。


 私は、異世界転生した。


 転生先は、空の上だった。


 羽が生えた。存在として生まれ変わった。


 前世の記憶は、経ったの一か月で忘れた。


 「前世の記憶なんて、信じてるのか。バカらしい。」


 私は、自分で自分に嫌気が差した。


 ある訳ないだろう。


 けれど、どうして、私は、あの人の事を知っているのだろう。


 地上で、高校卒業共に自殺したあの人の事を知っているのだろう。


 不思議だ。


 八咫烏 守は言った。


 「記憶の遺伝さ。生き物ってのは、記憶を紡ぐ。もしかすると、太古の昔か、将又未来の誰かが、御前の子供か、親で、そいつの記憶が、流れているのかも知れねえな。」




 私は、戦士長だ。


 鳥人だ。


 遺伝空間にて、過去現在未来を統一した、世界にて、破道を知れ。


 あらゆる、物質を、吹き飛ばす波動の更に、先破道だ。


 歴代の、鳥人は、かつての、鳥人ならば、容易に、使えていたはずの技だ。


 平和な年が、彼是一億年以上続いた、故に、鳥人たちは、纏のその先を忘れてしまった。


 御前は、私、一滴 零の末裔だ。


 私の血が色濃く受け継がれている。


 「纏は、実践の中でこそ、進化する。自分の力を信じ、恐れず、技を繰り出す事だ。出来なくてもいい、何度も、何億回でも、技を繰り出すんだ。失敗を恐れて無難な、技ばかりしていても、上達はしない。」


 一滴 零とは、誰だ。


 かつて、鳥族は、世界に現れた。


 翼に羽があればと願った。


 大空を羽ばたこうと願った。


 年歳と受け継がれてきた、遺伝子の軌跡、進化の歴史。


 脊椎動物の軌跡。


 「どうして、空を飛ぼうと思ったんだっけ。憧れからだった。」


 先祖の記憶が蘇る。


 生命は進化する。


 はじめは、只のアミノ酸、脂肪酸、リボザイムだった。


 さらにさかのぼれば、化合物だった、分子だった、原子だった、素粒子だった。


 フェルミ粒子であり、ボース粒子であった。


 力であった。


 引力と斥力であった。


 はっきりとした、記憶は無いが、確かに、うっすらと、粒子の記憶の断片を感じ、果てしない、宇宙の虚無感を感じる事がある。




 記憶を次の世代へ紡ぐ、念力。


 魔法。


 私の遺伝コードに刻まれた、雫の想い。


 「泡から、生まれた私達は、泡のように死に消える。唯一残された手段は、遺伝子、dnaによる、情報の伝達だけだ。しかし、遺伝子は、記憶の共有をプログラムされて居なかった。或る魔導士が、考え出した、記憶共有の魔法。其れにより、私は、時代を超えて御前に語り掛けている。3000年前、18歳でこの世を去った、男 笹原 翔の呪が、御前が、御前に張り付いているようだが、心配は要らない、あれに害はない。孰れ御前の力になる事もあるであろう。」


 笹原 翔。


 平凡な、一般人だ。


 普通に、生きて来た。


 普通に、夢を持って、友達を遊び、恋人を作り、勉強をして、生きて来た。


 誰もが、普通だという、人生を送って来た。


 その物語が、普通でありながら、人生っていうのは、どの様な人生であれ、劇的だという事はしっているし、そうだと思う。


 文字に書き起こすと、セカイを救うだとか、世界一の何々だとか、有名人だとか、学校で、一番だとか、大会で優勝して、プロになるだとか、そんな、大それた事を出来るものでは無かったが、私の中では、其れとなりの、葛藤もあったし、人の死も経験した、誰かを好きな成る事も、友達に裏切られる事も、裏切る事も、経験した。


 だが、私は、其れだけで、あった。


 特に何があった訳でもなかった。


 大事なものもあった。


 私が、自殺した理由は、単純な、死への憧れからであった。


 死ねばどうなるのか、を考える事が、歓びであった。


 ふと、楽しみを覚えるとき、その背後には、死の気配を何時も感じ取っていた。 


 だが、私は、死ぬ時、別段苦しんでいた訳でも、ない。


 酷い扱いを受けていたわけでもない。


 いわば、セカイの移り変わりに、殉じて死んだのだ。


 時代の趨勢へのアンチテーゼとして死んだのであった。


 あの時代、セカイは、言論の自由を奪われていた。


 セカイは、私の住んでいた時代では、在る国が、力を持ち出した、我が国は、高齢者を優遇する政策と、政府の失政により、人口減少と、生産力の減少に悩まされていた。


 我が国は、最早、誇りも忘れて、外国のものを買い、外国に依存し、外国に成り果てようとしていた。


 そんな、時代だった。


 かつての、私の母や、父の時代の様な、栄光を失い、最早、自国を守る事さえ、危うくなっていた。


 「分かっている。如何しようも、無かったんだ。結局私の死後、50年後、我が国は、弱体化の一途を辿り、頽廃した。」


 寧ろ、頽廃する事で、目が醒めたのかも知れない。


 以後50年の苦しみを味わった。


 実質上は、占領支配され、いいように、上の国に使われる時代が、続いていた。


「こうなってしまってからでは、遅いのだ。」


 分かっている。誰もが理解している事だ。


 「何処のセカイの話をしているんだ。」


 私は、尋ねた、一滴 奏として、又、空として、尋ねた。


 「もう、滅び去った。あるセカイのお話です。」


 男は、笹原 翔は、そう言って、遠い昔でも見るような、目で、何処かを見ていた。


 「あの時、私は死んだ。自殺した。セカイの果てを見届ける事もなく、世間と自己の認識の間に苦しめられた。平和などという言葉は、かの戦争の勝者の、都合のいい言葉でしか無かった。弱体化した国に、未来は無い。弱い奴は、虐められる、其れは国であれ、人であれ、同じ事だった。結局、いい人、正義の味方だなんてのは、稀だったんだ。」


 事実、革命派の人間は、笹原 翔の若い死に感銘を受け、更なる革命を生んだが、政府の国家警察に鎮圧された。


 以来、音沙汰なしだ。


 「当時の、私は高校生だ。力も無かった。だが、あのままでは、どの道、終わっていた。悪魔の条約が結ばれ、地獄が待ち受けている所だった。だが、結局、条約は、結ばれ、我が国は、実質、支配下に入った。」


 どうしようも、無かったんだ。


 と、笹原は、血の涙を流し、苦しんでいた。

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