一滴 奏は、暗黒 心を倒す為に、雪永と特訓し、閃脚を越えた瞬間移動の感覚を掴み、力魔法の存在を知る、しばらくすると、背中から、羽が生えている事に気が付き、己が鳥族である事を実感した。

雪永は、厄介な相手だと、落胆した。


 五人と儂は、街の人間に警報を出し、避難をさせた。


 家が大事だと、残るものもいた。


 民衆からは、反感も買った。


 八割の民衆は、中部の施設に避難した。


 儂らは、天空城の、最上階の闘技場で、奴と決着をつける事にした。


 儂は、奏に、作戦を言い渡した。


 奏は、部隊の中で、群を抜いて強いが、全力で戦うと、街ごと吹き飛ばしてしまう。


 故に、普段は、実力の本の20パーセントの力しか、使っていないので或る。


 故に、天空の最上階の闘技場で、奏と、黒闇 心で、タイマンをさせるのだ。


 天空の最上階の闘技場は、高さ一万メートルにある。天空の雲の階段を高く上った上にある。誰が何の為に作ったのかさえ、分からない、古代文明によって創られたとされる、天空の城から、続く、最上階の闘技場。


 「作戦は、以下の通りだ。何としてでも勝ってくれ。他の戦士たちは、残りの暗黒心の分身体と、住民の警護に当たらせる。」


 儂は、絶対に勝ってくれると信じ、結界に閉じ込められた、暗黒心の本体を、天空の頂に連れて行った。


 あの場所に居たのは、儂と、奏と、向日葵だけであった。


 向日葵は、戦士の中でも、有望株と見做されている、戦士で、実力は、五大将と同等か、それ以上であった。


 頂上の柱の神殿に、結界に閉じ込められた、暗黒心が、眠っている。


 暗黒心が結界から抜け出すと、言った。


 「我を閉じ込めるとは、見事な結界術よのお。されど、本の一時間が限界といった処か。」


 暗黒心は、堂堂と突ったっている。


 「ほう。我とタイマンを張ろうというのだな、お主。」


 奏はゴクリと息をのんだ。


 儂は、見守る事しか出来んかった。


 戦いは、三日三晩に及んだが、やがて。暗黒心は、、あきれ果てたようにして言った。


 「やめだ。」


 最初は、その言葉の意味が分からなかった。


 「やめだ。もう御前には飽きた。」


 暗黒心は、怒った様子で言った。


 「此れ迄戦って来たのは、本の50パーセントの力だ。もう、御前には懲り懲りだ。息も上がっている、楽しめそうにない。最後に100%の力で、御前を葬ってやる。」


 奴は、時空を超越していた。


 奏の閃脚でも、全く歯が立たなかった。


 一瞬で、間を詰めて、たった一度のデコピンだけで、奏をぶっとばした。


 やがて、地海星を何周かぐるぐるとし、闘技場に戻ってきたところを、空中にジャンプし、暗黒心は、強烈な蹴りを入れて、落下させたのである。


 思わず、儂は、閉口し、下を見たが、最早、奏の姿は見えなかった。


 死んだか。生きているといが。にしても、絶望的だ、奏でさえ、あの有様と成れば、最早、奴を止められる奴は、いない。此処はいったん退いて形成を立て直すしかあるまい。


 「向日葵、一旦退散だ。逃げるぞ。」


 「はい。」


 儂らは、逃げた。


 「影分身で、奴の意識は、逸らしてある。」


 儂らは、分身体を作りだし、暗黒心の目を誤魔化し、逃げた。


 逃げて、中央の第二拠点に来た。


 「おう、どうなったんだ。勝ったのか、奏の奴。」


 儂達が、帰って来たのをみて、雪永は、駆け寄って来た。


 街の住人達も、気になっているようだ。


 「負けた。奏は、頂上から、落ちた。死んだかも知れない。」


 五人の戦士たちは、絶望の色を露わにした。


 「どうすんだよ。詰んだぜ、此れはよ。」


 雪永は、天を仰いでいる。


 洋太は、至って冷静に言った。


 「終わりさ。逃げ続けて、隠れて生きるしかない。見つかったら御終いさ。」


 手を平を横に広げて首を傾げて見せた。


 「ま、住人の命が第一優先ね。直ぐにでも、南の第四拠点に避難場所を変えた方がいいわ。」


 珠樹は、提案した。


 「そうな。」


 薫は、珠樹の意見に賛成のようだ。


 「王は何をしておられる。」


 「死んだわよ。建物が倒壊した時に押しつぶされてね。」


 珠樹は、残念そうに言った。


 「上の人間が、何て言うか、直ぐにでも、城を取り戻せと、いうかも知れないわ。そうなれば、終わりよ。」


 薫は、クソ下らい議論で時間を無駄にし、年寄りが、得をするような政策ばかりをする、偉い人間たちに、嫌気が差しているようだ。


 「大丈夫だ。儂の方から話は付けておく。」


 儂は、天界の偉い人間たちに、大して一定の権威と権力を持っている。


 「未だに、黒い空間から、液体が出ては、人に変わり、民間人を襲っている、戦士たちも疲弊しきっている。」




 其れから、二日、未だに、戦士は戦い続けていた。


 不幸が訪れたのは、三日後の、晩の事である。


 「奴の気配がする。」


 儂は、咄嗟に眼を覚ました。


 「守さん。何やら不穏な気配がしませんか。」


 どうやら、向日葵も、その気配に気が付いているらしい。


 黒い液体が、手強くなった。


 第二拠点は荒された。


 雪永の両親、兄弟姉妹は、暗黒 心の、作り出す、暗黒分身により、吸収され、殺された。


 雪永は、怒り狂った。


 どうして、自分がこんな目に合わなくてはならないのかと。


 鳥人の人工は、八割減った。


 領土は追いやられ、遂に、最南端の第四拠点に迄、領土を縮小し、更に、常に地下施設で、隠れて過ごす事しか、出来なくなった。


 そんな生活が、一年以上続いたのである。


 珠樹と、洋太は、戦いで、命を賭けたが、死んだ。


 民衆の中で、何とか第四拠点迄、逃げ延びれたのは、全体の一割程度だ。


 逃げ延びる間の、足止めに命を賭けた二人は、死んだのだ。




 「最早、鳥人は、僅か、30人程度しか、生き残ってはおらん。」




 記憶が戻った訳では、ない。


 衝撃の事実を、起こった出来事の記憶を、守から、流されて、状況を理解した。


 理解はした、けれど、私に何が出来るのであろうか。記憶を失う前の私でさえ、大敗を喫した敵に勝てるのだろうか。


 私は、重大な責任を負っていたのだ。


 残り、30人にも満たない、一族の希望であったのだ。


 そうとも知らずに、私は、地上で、冒険をしていた。楽しい冒険だった。


 レベッカ、橘博士。あの一年色々な事があった。


 髭の男は、知っているのだろうか。暗黒心の正体を。


 レベッカは何をしているだろうか。




 「勝ち目はない。分かっている。儂の知恵をもってしてもどうする事も出来ない。火拠瑠玖文字を解読し、文献を調べて居る内、に、暗黒 心らしき、生物が、かつてこの世界に存在していたらしい事実は分かったが、弱点も、分からない。」


 守は、口惜しそうに、歯をかみしめた。


 「彼奴が来れば、終わる。此の遺跡の地下だけが、唯一、暗黒 心にばれていない。恐らく古代人の特殊な結界によるものだと思われる。」


 雪永が、私を見ていった。


 「御前しか、もう、いないんだ。如何するんだ、実力を取り戻せるように、相手はしてやるよ。」


 「悪い。私が不甲斐なかったばかりに。」


 記憶を失っていたとしても、私が、勝って居れば、雪永の家族は、生きていた。殺されてはいなかったのだ。


 「もう、辞めてくれ。イライラするんだ。思い出したくもない。」


 雪永は、髪の毛を掻き毟って、暴れ出した。

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