第5話 3/7

 受験も終わり道を彩る色はピンク一色になっていた。皆証書を手に持ち涙を流す者や、写真を撮る者、談話している者様々だった。

 藍里は第一希望は落ちてしまったが、なんとか第二志望に合格でき表さきと帰路に立っている。

 あの時公園に向かっている時のように無言で歩く。

「さき、私大学入ったらショートにするんだ」

「そっか」

「服もたくさん買っておしゃれしてなりたい自分になるつもり」

「いいね」

「一重が映えるメイクだって研究してやるんだからな!」

「うん」

「てか私たち成人の制度変わったから唯一19歳成人だけど、成人式とかどうなるんだよう!!」

「そうね」

「‥‥さき。こっち向いて」

 藍里は表さきの頬に手を添えて無理矢理自分の方に向けた。美しくアンニュイな瞳は悲しそうに伏せられている。そして苦しそうにぽつりぽつりと表さきから言葉が落ちる。

「私強くないの。全然強くない。知らなかった?そっか‥知らなかったか。貴方とは夢で会えたらよかったな。え?そんなこと言わないでって?ふふ、ごめんなさい?私ね、ずっと練習していた事があるのよ。怖いわ、声震えないかしら?大丈夫かな?ね、藍里、ちゃんと最後まで見ててよね。最後まで私を瞳に写して」

 表さきは背筋を伸ばし深呼吸をして藍里を見つめた。藍里もまた彼女を見つめる。童話から出てきたような顔立ち、意外と繊細なのになんでも全力、そんな彼女が桜と共に靡かれる。

「さようなら」

 涙を浮かべ、表さきは精一杯の笑顔を見せた。今まで見てきた顔の中で一番ブサイクで、一番美しく、一番愛らしかった。

 その日、藍里の手にはひどく暑い雨が振った。

 彼女が纏った最後の香りは甘じょっぱい。さようならには彼女のありがとうと愛してるが込められていた。

「さき、私今日はまだ一回も口説かれてないよ」

「この胸の炎を着火したのはさきなんだから、ちゃんと私のところに戻ってきて消してよね。とても一人では消すことができないんだよ」

「あぁ、さき。ありがとう」


「さようなら」

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19歳成人の私たちへ 鳥羽るか @dokuso__001

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