第2話 人気
その声の主は紛れもなく検非違使であった。下人は特段検非違使らと関わりがある訳ではなかったが、悲しきかな、下人の様に関わりがない人でも検非違使の声を知っているというのが京の現状であった。
あの羅生門の例ひとつとってもわかるし、現在の下人の状態を考えてもわかることであるが、京は大量の犯罪人やその予備軍を抱えていた。その為、昨日はあっちで極悪人を捕まえただとか、今度は大泥棒を縄にかけただとか言って、検非違使の名声は名実ともに上昇していた。名声があがると、その名を使い金儲けしようとする者も現れる。その一つに、検非違使の声真似をするというのがいたのであった。だから、しがない使いをやっていた下人も道端で聞いたことがあった訳である。
「おい、お前。そこのお前だ。こんな夜中に何をしている。」
「は、はいぃぃぃ。検非違使様。と、特になにをしているという訳ではございませぬ。ただ散歩をしているだけなのでありますぅぅぅぅ。」
「ふむ。ここは貴族が住むようなところだ。何故貴様のような格好の人間がここを散歩しているのだ。」
「実は私、京の人間ではなく、地方から観光に来た人間なのです。それで、京を探索していたらつい迷ってしまって。」
勿論噓である。冷静に考えると、喋り方から田舎者ではないことがバレそうである。しかし、現在の下人の状態を考えると、ある意味最適な解答だったかもしれない。
「成る程。田舎から来たならあり得るな。では国境を越えた際に貰った印を見せよ。」
「それが、あの。」
「まさか、何も貰っていないわけではないだろう。早く見せ...おい、お前!」
次の瞬間、下人は走り出していた。
羅生門 下人のその後 @ruuuuuuuke
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