至ってシンプルな話のように、私には読める。
何も、謎が深いとか真相は不明とかと読みたがらずともよいのでは。
武弘。死んだ人間であり、盗賊を非難するのは当たり前として、偽ってまで妻を貶める発言などあり得ぬことであろう。
武弘のはなしが真相にもっとも近いところにあり、それをベースにして見てゆけば、わりあいシンプルな真相が見えてくるのではないか。
謎というのであれば、だれが殺したか、妻の発言が、ではなく、各々の感受のありようであろう。
一人語りというところが味噌で、あくまでも主観でしかなく、偽らざるともその語り手の主観でしかないわけで、それだけでも食い違いが出てくるのは必定。
わかりやすい謎をおいた上で、人と人との疏通のむつかしさをあざやかに描き出した作品。