第9話:スライムのラビオリ蒸し(1)


 ボンソワー! 日本のみなさ~ん!

 今回は、かの有名なスライムの食べ方をご紹介しますわ!


 スライムって、お馴染みの雑魚キャラNO.1。

 そう! キング・オブ・雑魚!

 説明は、全く不要ね。

 でも知ってる? 実は、ものすごい高級食材だってこと。

 みんな、「どこにでもいるモンスターじゃん」と思ってるでしょ?


 確かにスライムは、どこの森にも住んでるわ。

 じゃあ、何がそんなに高級なのか……?

 それは、とっても手間がかかるから!


 仕込みから調理まで、なんと10日もかかる、気長な作業が必要なのよ。

 だから、おいそれと店に置けないし、食べる人も少ないわ。

 高級料理店でしか扱わない、グルメだけの珍味なの。


 まず見てほしいんだけど、これが今回の食材のスライム。

 お手玉ぐらいの大きさの、可愛い子供スライムよね?

 ほら!


「きゅー!!」

 (手の囲いから出され、スライムが驚いている)


「大丈夫、あなたを食べたりはしないわ」

 (そう言って、ティルレがそっと両手の掌を閉じる)


 スライムは、そのまま焼いたりして食べないのよ。

 そのまま食べると、硬くてあごが疲れちゃう。

 骨もないスライムが硬いって、意外でしょ?


 スライムは、地上で生活するのに液体の身体を保ってられるわ。

 しかも、綺麗なまん丸に。

 でも、考えたらすごいことよね。

 骨もない生物が、地上で元気に飛び回るって。

 スライム以外で、見たことありまして?


 その秘密は、とても丈夫な細胞繊維!

 全身が水分を取り込む、軟骨質のゼリーでできてるの。

 ちょうど、海にいるナマコなんかが近いかしら。

 ナマコもそのまま食べると硬いわよね?

 だからあんな体でも、動き回ることができるのよ。


 このスライムを食べるには、一度水分を蒸発させてカラカラに干さないといけないわ。

 乾燥させることで、丈夫な細胞組織を内側から壊すのよ。


 で、干したスライムがこちら!

 かっちかちで、ビー玉ぐらいの大きさね。

 これをゆっくり水で戻していくのよ。


 戻し方は……


・よく洗った乾燥スライムを熱湯に入れてひと煮立ちさせ

・そのまま8時間放置

・8時間経ったら水を捨て、新しいお湯を沸かしてひと煮立ち


 こんなことを毎日3回、10日間も繰り返すのよ。

 私も仕事じゃなきゃ、やらないと思うわ。


 で、その工程をくり返して柔らかくしたものが、こちら!

 ほら、ぷにぷにでプリンみたいでしょ?


 プリン、プリン、プリ……、あぁ……中島少佐ぁ……


 ……あら、ごめんなさい。

 ちょっと、昔を思い出しただけ。

 泣いてなんか、ないですわよ!


「ちょっと、アルフォンソ! このスライム、表に放してきてちょうだい!」

「ウィー、ムッシュ!」


 (作業中だったアルフォンソが、手を止めて駆けてきた)


「いい? 場外のモンスターや子供がいなさそうなところよ? 裏にある、池のそばがいいわ」

「ウィー、ムッシュ!」


 (スライムをかかえ、小走りで調理場を出ていった)


 あらやだ! もうこんな時間。

 調理のやりかたは、また次号ね。

 とっても美味しいラビオリの作り方、ご紹介するわ!


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短い間でしたが、お付き合いありがとうございました。

カクヨムでは、ほとんど読者がいらっしゃらないので、

小説家になろうに投稿していきます<(_ _)>

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異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ! 佐雲渡(さうんど) @saundo_kuranosuke

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