第7話 俺は強くなったぞ!

 他に襲撃者がいないか探し回ってみたが、見つからない。他に不審な人物が居なかったかをみんなに聞いても、特に情報は無かった。


 だからあの二人だけが襲撃者だと思う。でも万が一でも取りこぼしがあったら大変だ。気を抜かずに探していると、魔王さまに会った。



「リュートそんなに急いでどうしたんだ?何かあったのか?」

「はい、ゴブリンたちが襲撃者に攻撃されかけたらしく、その襲撃者は捕らえたのです。でも、他にもいるんじゃないかと思いまして、今探しているところです」

「なるほど。その襲撃者は捕らえたんだろう?だが、そこまで心配しなくても良いと思うんだが」

「でも、万が一というのもありますし、みんなが危険な目に遭わないように気を付けたいんです」



 ん?少し待てよ。なんで魔王さまが一人でここにいるんだ。ゴブルが一緒にいるはずだよな。でも、緊急事態だからおいて先に来たのか?少し変だな。


 ここは本人に聞いてみるか。偽物なら、辻褄が合わないはず。



「……変な質問していいですか?」

「なんだ?まあ良いだろう、言ってみろ」

「俺がここに来てから作った料理の名前を言ってください」

「アレだよな、覚えてはいるけど名前が出て「カレー、カツカレーだ」こない!?」

「正解です、魔王さま。それで、貴方は誰ですか?偽物さん」



途中から話に入って来たのは本物の魔王さまだった。ちゃんとゴブルと一緒にいる。俺の考えは当たっていた訳だ。


 一方、偽物さんの様子を見ると酷く慌てているみたいだな。どうしてここまで慌てているのか知らないが、余程魔王さまを見くびっていたらしい。



「何故だ、何故、ここにいる?私の作戦は上手くいっていたというのに!」

「そういえば、俺が魔王様の所に向かっている途中で、変な物を見つけたからぶっ壊しておいたぞ!」

「良い判断だ、ゴブル。後で礼をしてやる。楽しみにしておけ」

「やったぜ!」



ゴブルが独特な踊りをしている。その様子を見るに、かなり魔王さまのお礼って凄いんだな。俺もいつかもらいたい。


 というか、俺の質問が無視されているんだが。それは酷くないか。少し落ち込むぞ俺。



「それでだ私の偽物よ、その格好で何がしたかったんだ?言ってみろ」

「……こうなったら、お前を道連れにしてやる!こんな結果になったのもお前のせいだからな、リュート!」



偽物――中身はおっさんかどうかは知らないが――に抱きしめられるのは嫌だ!即座に避けるが追いかけてくる。しつこいぞ、コイツ。もう面倒だ、眠らせてやる!さっきの睡眠魔法を偽物に掛けた。


 ふう。ようやく寝たか。なかなか効かなかったから、このまま追いかけら続けるかと思った。必死過ぎて、少し怖いな。


 というか何故に俺のせいになっているんだ?完璧にお前のせいだろ。お前の失敗を、俺に押し付けてくるなよ。



「それでコイツはどうしますか?」

「コイツは私が尋問しておく。リュートはこの辺りを見張っておいてくれ。ゴブルはリュートの指示に従うように」

「「はい/分かったぜ」」

「それでは任せたぞ」



俺たちは頷く。ここの見張りを任された俺は気合を入れる。魔王さまは襲撃者を背負い込み、どこかに向かって行った。俺はこの辺りを見て回るとして、ゴブルをどうするかだな。


 一緒に行くというのでも、問題は無いだろうけど緊急事態の時に、そうするのはちょっともったいない気がするんだよ。


 じゃあどうするか、そういえばゴブリンたちに見張らせている二人がいた事を忘れていた。そこをお願いするか。



「ゴブルはあっちの方向に、俺が倒した襲撃者二人がいるから、それを魔王さまのところに届けてくれ。眠っているから、くれぐれも起こさないでくれよ?絶対面倒な事になるのが分かる」

「分かった。任せろ!こう見えても運ぶのは得意だからな。問題ないぞ!」

「そうか。それならいいんだけど。それでも一応気を付けろよ。多分勇者として呼ばれた奴等だから」

「そうなのか、そこまで言うなら気を付けるぜ。忠告、ありがとうな」



ゴブルは弟と妹がいるところへ向かって行った。さて、俺も見回りしますか。左右を見ながら、歩いていく。


 グルッと一周回ってみたが、流石にこれ以上は何も無いみたいで、良かった。まあ警戒はし続けている。だんだん暇になってきたな。


 そう油断していたのが、悪かったみたいだ。喉が渇いたから、水を飲んでいる時に周りを囲まれてデカ目の魔法陣が出てきたんだ。


ヤバいと思って逃げ出そうとしたけど、瞬く間に手錠を掛けられた。それでも逃げようとした。でも間に合わなかったんだ。


 見慣れた景色から、一転して見覚えがない場所へと連れ去られる。そして抵抗らしい抵抗も出来ないまま、明らかに牢屋にしか見えない場所に入れられた。



「おい、ここは一体どこなんだ。いきなり拉致しておいて何も思わないのか?」

「貴様は犯罪者なのだ。このディザーイア王国が裁きを下してやるのだ、嬉しく思えよ」

「はあ?何言ってるんだよ!俺が犯罪者だと?ふざけるのもいい加減にしろよ!」

「貴様の戯言を聞いている暇はない。さっさと行くぞ」



俺を拉致した集団はどこかに行ってしまう。全く何が起こっているんだよ……。それにディザーイア王国ってどこだ。もしかして俺を召喚した国か?そうだとしたら、面倒だな。


 戦力を欲している国だから、俺も強引に戦場へ行かされる可能性だって、ゼロじゃない。今でも犯罪者というレッテルを貼られているんだ、さっさと脱獄した方が身の安全も確保しやすいはず。


 だから今は、この手錠をぶっ壊して……いや、待てよ、壊したら何らかの魔法でバレるかもしれない。この手錠の詳細が見たいな。


『要望を確認しました。詳細を表示します。』



名称:手錠


説明:見た目は普通の手錠です。ですが、装着している人の居場所が分かったり、壊すとアラーム音が鳴ったりするように設定されています。分解するのは問題ないです。



 へえ、分解すれば良いんだ。でも分解するのは後にしよう。複製して俺を強化する道具に変えよう。同じ物で元の効果を無くしてAGIをかなり高くしたいから+100上がるようにする。


 よし、出来たな。でも一応性能を確認したい。


『要望を確認しました。詳細を表示します。』



名称:手錠


説明:見た目は普通の手錠です。琉人が作り直した事により、元の効果は無くなりAGIが100上がるようになりました。



 ちゃんと思った通りになっている、良かった。そういえば、居場所が分かるんだっけ、面倒くさいな。解除すれば問題ないか。手錠を開く鍵を作ってと、これでこの穴に挿して回せば解除出来た。


 この鍵はアイテムボックスに入れておく。俺が色々と作れる事がバレないようにしておかないと。手錠はとりあえず見えにくいところに置いて、掛けて俺があたかもここにいると錯覚させる。


 俺だとバレないように、フードが付いていて他の人に見えなくなるマントを作る。それを着てフードも深く被り、俺が作った手錠を掛けてスピードを上げ、壁をドンドン分解していく。


 自分が通れる位の大きさになったら、そこを通って壁を直す。これで、どこから脱獄したか分かりにくくなるはずだ。というかもう外なのか。警備が緩くて助かった。


 とにかくここから離れないとな。思いきり走りまくる。途中から魔法で速くして更に距離を稼ぐ。流石にここまで来れば問題ないだろう。


 でも一つ問題がある。ここはどこなんだ!転移魔法で連れてこられたから、現在地がどこなのか分からないまま、適当に走ってきたので全く分からないぞ。


 転移魔法で帰れないかな。ここと魔王さまの城に繋げて一時的に行く事が出来るようにすればできるか?


 現在地と城を一点に重ねてそことここ繋ぐ門を作るイメージ。ゲート!なんとなく言ってみたくなったんだよ。大きな青い扉が出現した。よし、帰ろう。俺の居場所に。


 扉を開けてくぐると、そこは見慣れた景色があった。やった、帰ってこれたぞ!それにしても俺を拉致して何をやろうとしていたんだろうな?そこが謎だ。


 さて、警備を任されたのに仕事していない俺が帰ってきたら、どうなるのか怖いけど戻った事を伝えないとな!ドラゴンがきっと報告しているだろうから、みんなの反応が気になる。


 とりあえず、マントを取るか。このままだと誰にも見つけてもらえない。マントを取り、アイテムボックスに入れる。ついでに鍵を取り出し、手錠を外す。ゲートも解除してと。


 もう、これ以上何も無いと信じたいが、一応警戒しながら歩いていく。そしてどこからかゴブルの声が聞こえてきた。



「おい、あれはリュートじゃねぇか!確保しろ!急げよ、お前ら!」

「「「分かりました!」」」



うん、確保だと?俺が何かしたって言いたいのか。俺はやられた方だよ!拉致したのはあっち側で俺は無実だ!


 そんな事を考えていると、ダッシュで来たゴブリンたちによって、俺は確保された。抵抗はしなかったよ。仲間だし、こうやって確保する意味もあると思ったからな。



「よし、リュート確保!お前らは他の奴等に声を掛けて、発見した事を伝えて魔王様のところに来い」

「「「行ってきます!」」」

「なあゴブル、この状況は一体どうなっているんだ?」

「リュートが、転移魔法で拉致されたから皆で、探し回っていたところだよ。後、魔王様が物凄く怒って王国に、単身で乗り込んでいったぞ」



えっマジか。魔王さまがブチ切れしていたんだ。このままだと王国、確かディザーイア王国だか、なんだかが滅ぶな。


 それから、怒涛のように物事は進んで行く。魔王さまがなんとか王国を上層部だけ滅ぼして、今までよりも真っ当な国にする為に、色々な策を使って立て直させた。


 もちろん取られた領地は返してもらい、元の生活を送れるように避難民を支援している。俺も進んで家を建てる事を手伝ったり、食事の提供をしたりして手伝った。


 それで何故か、他の国々が俺を自分たちの国に、譲ってくれと言われているらしい。それに対し魔王さまは俺を養子とした事を宣言する。その上で俺に勝って俺がその国に行きたいなら、行かせてもいいと言った。


 挑戦者はその国で一番実力がある人たちらしいので、強い方だ。俺が全勝で全部拒否している。懲りずにまた来ても、普通に倒せている。


 だから俺はちゃんと強くなっているぞ!雑魚から強めに進化した!魔王さまには勝ててないけどな!

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雑魚な俺は魔族の味方をする事にした むーが @mu-ga

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