神界のルール

わけ

神界のルール

ここは神界。

我々は神だ。


神は不老不死で、食べたり排泄したり、交配したり繁殖したりする必要もない。

神は強いがつまらない。神が仕事以外で楽しむ方法は、ポーカーとサイコロ、そして「天神の鏡」を通して人間界を見ることしかない。


俺は輪廻転生の神・セーノ、死後に生まれ変わりを司り、他面を司る神たちと神界に住んでる。


愛情の神・グロル、運命の神・カノン、戦争の神・イデン、自然の神・アダム......それぞれの神には称号がある。


「お前ら、一日中ポーカーとサイコロしかやってないのか?」

「神様」でありながら、俺らは働きたくないけど、天神は働くよう強制するルールを作った。


——「神界のルール」っていうもんだ。


「神の役割は、自分の司る領域で人間を祝福したり、呪いをかけたりすることです。

しかし、祝福であれ呪いであれ、神は神界のルールに従わなければならない


神界のルール・その1

神が供物を提供しようとする人を、神は自分の領域で祝福する 


神界のルール・その2

神を侮辱する者は呪われる


神界のルール・その3

神の祝福と呪いは打ち消し合うことができる


神界のルール・その4

神の祝福や呪いがかなえられない場合は、受けた人の子供が受け継ぐことができる


神界のルール・その5

神と人間の間に私情があってはならない


天神より」


天神のルールは絶対。

好きじゃないけど、このまま始めるんだ。


***


神が助けてくれないと不平を言う人がいつもいる。

「どうして悪しきことをした人が悪の報いを受けなかったのか!!?この世界に神は本当にいるんでしょか?」


「うるさいなぁ、人間!」


「仮にこの世界に神がいたとしても、きっと馬鹿なんだろう!」


その言葉に居合わせた全員が激怒し、俺らは彼に呪いをかけた。


翌日、この人は自殺した。

彼が来世で蚊に生まれ変わたのは、俺も彼を呪ったからだ。


***


ある老人とその家族は、あまりにも多くの呪いを受けて、何でもうまくいかなかった。


それで、彼は神社に来るたびにたくさんのお供物を捧げた。


神は何の供物でも受け入れてくれるわけではない。

人間界で大切なものでなきゃダメだ。


「神様、このくらいでいいんですか!?」


「よし!残りの三分の一で完全に相殺できる」

そう言っても、彼はまったく聞こえない。


「神様、この程度でよろしいでしょうか...!!?」

「いいぞ!また八分の一」


「神様...!私に対する呪いをどうやって打ち消すんですか!!!?」

「お前はもう2回来ればいい」


「神様...何しちゃっても現状を変えることはできないんですか?」

「いやいや、またもうすぐに...」

「息子よ、神への供物を取り返そう!」


この老人の業障ごうしょうは、墓の中にもずっと付きまとうことになる。


***


同情を禁じ得ない人をたくさん見てくる。


恵津子ちゃんの両親の業障が重すぎて、家族全員が神の呪いを受けた。

彼女はまだ3歳で罪のない子供だって。


彼女が8歳の時に両親を交通事故で亡くす。

つまり五年後。


10歳、親戚に家財を奪われ、孤児院に預けられる。

15歳、学校でいじめられ、自殺未遂を繰り返し、重症のうつ病になる。

23歳、恋愛感情を弄ぶ男に感情を騙され、人工流産をさせられる。

26歳、陥れられて刑務所に入る。

30歳、多額の借金を抱えてる。

33歳、不慮の事故で重い障害を持つ。

……

90歳、自宅で孤独死。


かわいそうな恵津子ちゃん、悲惨な一生を送ることになるんだ! 

って、とはいえ、神として、無条件に彼女を助けることはできない。それが神界のルールだからだ。


でも、幸い、彼女は45歳の時に輪廻転生の神(=俺)を信じることを選ぶ。

彼女は俺に生まれ変わりを祝福されるつもりだ。

来世は某国の元首の家に転生させよう。


それじゃ、一生はつらいけど、来世は幸せだろう。


今週の仕事はふらふらと終わった。

実は、人間が幸せに生きてるとか、苦しいとか、そんなことは考えない。

人間のどんなことでも、俺らにも関係ない。

神としての義務を果たしてるんだって。


「さあ、次のゲームが始めるぞ!」

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神界のルール わけ @mahanekazeshima

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