かつて、電〇男という話があってさ
多賀 夢(元・みきてぃ)
かつて、電〇男という話があってさ
(とある匿名掲示板にて)
★:私は、他人の美醜なんて分からない人間だと思った。
映画やドラマになったあの話も、何度見たって印象が薄かった。私は二次元には萌えるけれど、三次元はどれも汚く見えるの。
だって、三次元はトイレ行くじゃん。
二次元は絶対行かないじゃん。行かないったら行かないじゃん。
そう思ってたんだけどさ。
ある日、バスに乗り込んできた金髪の外国人がとんでもなく美しかったの。男。年齢は分かんないよ、でも若いと思う。口開けてうっかり見惚れていたんだけど、なんだか困っていたの。入り口に置いてある乗車券が出てくる奴。あれの意味が分かんなかったみたいで、外国語で何か言いながら立ち止まっちゃって。後ろに列ができてたのね。
直ぐ後ろのおばちゃんの顔が醜悪になってたから、私は慌てて席を立ち、乗車券を抜いて彼に渡したの。
「☆〇▽××〇」
って何言ってるか分かんなかったから、笑顔で「サンキュー」って言って席に戻ったの。席は取られなかったよ、荷物置いといたから。
彼はおっかなびっくりって感じで吊革につかまってたんだけどさ、私より手前のバス停でボタンを押したのね。あ、押せたんだって思ったけど、どうやらそれまでの乗客の様子を観察していたみたい。
で、彼が降りる順番になったんだけど、降り口でまた止まっちゃった。私はまた荷物を置いたまま前まで走って行ったの。どうやら、支払いが分からない上に、運転手が怖かったみたい。確かに、なんかすっごいブチ切れてたもんね。
私がポケットから小銭を出して、スリットに入れる真似をして、彼の乗車券を差してから、あのデジタルの料金表を指さしたの。そしたら彼はやっと理解したけど、いきなり千円札を入れようとしたのね。私は慌てて首を振って、自分のポケットマネーで260円払ったの。バスってお釣り出ないじゃん、あの仕様って本当に不親切だよね。
彼はキレイな顔をぱあっと輝かせて、また「☆〇▽××〇」って言って降りて行った。なんとかバ?とか言ってた気がする。
彼が降りて、やっとバスが走り出して。安心して席に戻ったら、知らないおばさんに取られてた。荷物は通路に出されてた。なんかむかついた。
で、相談なんだけどさ。
私、『バス女』になれるんじゃないかって思ったの。
彼ってきっと、日本に来て右も左も分かんないんだと思うのよ。その中で最初に親切にした私って、ポイント高くない?
------------------------------------
>なんとかバ?とか言ってた気がする。
ロシア語ではないかと推理
スパシーバ=ありがとう
------------------------------------
はい自演ワロスワロス
------------------------------------
とりあえず自分のスペックを晒せ
話はそれからだ
------------------------------------
★:私のスペックは、そろそろ人生の曲がり角を迎えるBBA
顔は平凡、〇近に似てるって言われる。友〇よりは少しやせてる
仕事も平凡な会社の事務、リアルでは未婚、婿は2次元にたくさん
------------------------------------
まずは二次元婿と別れる
------------------------------------
★:それは無理
------------------------------------
無理と言っている時点で無理
------------------------------------
主よ、所詮金髪美少年も三次元だ、トイレは行く、クソもする
目を覚まして二次元にイキロ
------------------------------------
★:あの人は絶対に行かない!
だってバスも乗れない人だもの!
------------------------------------
……それは、その人の国とバスの乗り方が違うからだよ……
------------------------------------
やめてやれ。彼女は夢が見たいのだ
------------------------------------
★:夢じゃないもん、現実だもん!
------------------------------------
はいはいアラフォーが痛い事言うんじゃありません。
てか電〇男知ってる時点で年齢をお察し
婚活サイトを処方しておきますね
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数日後
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
★:やっぱり三次元最低だった
------------------------------------
さっそくどうした、奴がトイレに入るところでも目撃したか
------------------------------------
それで最低ってどういう神経よ
------------------------------------
★:女連れてた……しかも、べたべた触ってた……
------------------------------------
あちゃー、男子は万国共通
------------------------------------
状況を説明しろ、それじゃ分からん
------------------------------------
★:同じバスに、また彼が乗って来たの。
だけど今度は女連れだった。多分大学生くらい。
女は彼の代わりに乗車券を取って、色々謎の呪文を唱えながら彼を自分の側に惹きつけていた。彼は彼女の魅了の魔法にかかっているのか、彼女と離れまいと肩や腕を掴んで離さなかった。
私のすぐ前のベンチ席が空いたから、二人はそこに座った。女の呪文は延々と続き、彼が魅了の魔法から解かれるのを拒んでいた。
女は化粧もしていない冴えない顔だったけれど、きっと彼には女神のように見えていたのではと思う。青い瞳を持つ目を、時折うっとりと細めているのを見て歯ぎしりしそうになった。
そして降りるとき。女は、なんと彼に『両替』をさせたの!『両替』よ!!
それ教えちゃったら、次彼が一人でバスに乗った時、私が代わりに払う事ができないじゃん! 接点なくなるじゃん!
おのれ女め、と、バスが発車してからも私は彼らを目で追ったわよ。そうしたら彼、彼女を抱きしめたの!抱きしめたのよ!!
その時になって我に返ったわ、あの男は女ったらしなのよ! あの女も、何も知らないで男をたらしこんだつもりになっていたに違いないわ!
だから三次元は嫌いよ!全員が全員、女をコマす事しか考えていないサルなんだわ!
私の婿は全員健気よ、私しか見ないもの。他なんて見向きもしないもの!!
私は永遠に二次元の婿たちと生きていくわ!!
------------------------------------
なんだネタか
------------------------------------
ネタでしたね
サルを差別した事に謝れ
------------------------------------
そして呪文ではなくロシア語な
魅了の魔法とかどこまで二次元脳なんだアラフォー
------------------------------------
他国ではハグが感謝のしるしだ
日本がボディータッチ少なすぎるんじゃ
------------------------------------
バスは混んでたんでしょうか
それなら、はぐれないように肩とか腕とか掴みますよね、日本人でも
------------------------------------
二次元の方がえぐいよな
課金という形で金をたかるし
ホストよりハマると沼
------------------------------------
てか、複数の婿を持っている事が浅ましいと思う
------------------------------------
いっそ二次元に住めばいいよ
そうすればお望みの美男子がよりどりみどり
getできるかは課金次第
どこへ行っても世知辛い恋模様
------------------------------------
とりあえず、邪念払ってこい
話はそれからだ
かつて、電〇男という話があってさ 多賀 夢(元・みきてぃ) @Nico_kusunoki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます