第11話 アンジー

その大木を見つめていると、やがてその手前にぼんやりと何か生き物の様な姿が金色の光に包まれながら現れて来た。

金色の光は徐々に輝きを失い、

すると七実達の目の前に黒くてまるで大きなネコの様な生き物が現れた。

その生き物は眼を開くと、まるでサファイヤのようなブルーの瞳を輝かせていた。

七実はしばらくその生き物の瞳の美しさに見惚れていた。

すると、その生き物は七実を見るなり

物凄い勢いで七実の所まで飛んで来た、

そして七実にギューっと抱きついて来た。

その生き物は嬉しそうに泣きながら言った。


「おかえり!誠司!きっと戻って来てくれると思っていたよ。

ずっと待っていたよ。」

七実は自分の事を父さんだと思ってるんだと気付いた。

だけども、その生き物は泣きながら七実を強く抱きしめ続けていた。

「誠司!なんだかちょっと背が縮んだんじゃないの?!」

ワフアはその興奮した生き物を優しく宥めるように言った。

「アンジー。その子は誠司じゃないんだよ。

誠司の子の、七実だよ。

やっと私たちの世界に来てくれたんだよ。」


七実は、その生き物がワフアからアンジーと呼ばれているのを聞いて、この生き物が怒りの精霊アンジーなのだと気付いた。


するとアンジーは更に興奮して

「七実!ずっと君を待っていたよ。

どんなにこの日を待っていたことか!

親愛なる誠司から託された手紙を渡そう!」


ワフアは一人興奮気味なアンジーに言った。

「アンジー。そうだね。

遂にやっとこの日が来たんだね。

だけど、アンジーまずはあの氷ついた湖をなんとかして溶かさなければね。

溶かす方法を皆んなで考えよう。

大丈夫。私たちなら出来るから!」


アンジーはワフアに言われて、だんだんと悲しそうな表情になって来た。

「ワフア…。ごめんよ。

私がもっとしっかりしていれば良かったのに。

命の実が産み出せないなんて…。

なんて、私は弱く愚かなんだろうか。」

アンジーは泣きながらワフアに言った。


とても悲しそうな顔でワフアも答えた。

「アンジー。そんな事ないよ。

私こそ、弱くて愚かだ…。

仲間にこんな思いをさせていたなんて…。

だけどね、アンジー。今七実は私たちの世界に来てくれた。

きっと大丈夫。全てはうまく行くはず。

次はカインの所は行こう。

カインの力も必要だよ!」


「カイン?!って誰?!」

七実はすかさず聞いた。


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