昼休みにこっそり読んで、ニヤニヤする為の話

不透明 白

なんだろうこの気持ちは

 キーンコーンカーンコーン。

 三時間目の授業に終わりを告げるチャイムが鳴った。

「よーし、じゃあ今日の授業はここまで! お疲れ様ー」

 先生は授業終了の挨拶をすると、荷物をもってサッと教室から出ていった。

 その合図を皮切りに、クラスの連中は各々の行動を開始する。


「ふー、疲れたー」

「なぁなぁ、飯食ったら体育館行かね?」

「まじ、さっきの授業眠かったわ」

「先にご飯食べてて、私提出しなきゃいけないプリント出してくるから!」

「えー、前回の小テストが不合格だったものを発表します……」

「ねぇ、知ってる?」


 昼休みに入った途端に、走って購買部に向かう運動部達、大人数で机を囲んでいる女子たち、昼休みに提出するための課題を慌てて取り組んでいるおっちょこちょい、大声でふざけたりじゃれ合ったり走り回っている迷惑坊主ヤンキー。

 そんな中、俺は一人で机に座り、お母さんが作ってくれた弁当を食べながら、小説を読んでいた。

 それは、小説投稿サイトの内にあった作品で、新作順の中から面白そうなものをたまたま見つけたので、それを読もうとしている。


「一緒に飯食わん?」

「いいよー……あーお前の席行くか」

「おう」


 まるで、席を譲らなかったのが悪みたいな感じになるのはなぜだろうか? ここは俺の席なはずなのに。

 少し気になることがあったが、気を取り直してその小説を読み始める。


 ――なんだろうこの気持ちは。

 時計の針を見ると十二時半をさしていて、昼休みが終わるまであと十五分になっていた。

 短編で終わるこの小説を、パッと読み終えた感想はというと、先ほど言ったように「なんだろうこの気持ちは」であった。

 窓を誰かが開けた。

「次の時間体育だべ。早めに行かね?」

「おう」

 どうやら、次の時間は体育らしい。

 窓から外を見ると、あいにくの雨である。それが、あいにくかどうかは人によるだろうから一概に言えないが、世間一般ではあいにくと言っておいた方が無難らしい。

 教室から出ていく人を、耳で感じ取る。和気あいあいとした声が、廊下を通って遠くに過ぎ去っていく。

 そして俺は一人になった。

 この時、毎回強い不安を感じるのは、一人でも大丈夫だと強がっている自分自身への警告だろうか。

 そんな不安に駆られるように、体操服を持って体育館へと歩いて行く。

 そんな昼休みに終わりを告げるチャイムが鳴る。

 キーンコーンカーンコーン。

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